第2話

可愛らしく切り取られた蝶々や緑の葉っぱ、小鳥の画用紙に長女と私は色を塗った。オイルクレパス、二十色はありそうなクーピーそれと娘の大好きなサインペン。落ち着かなくバギーを押して歩き回ろうとする次女を制しながら何枚か仕上げるとそれは壁に貼られた木の作品の一部になる。両面テープの裏紙を爪でカリカリと剥がしてスタッフに渡した。

私はいい大人なのに歌いながら絵を染めていた。あっ歌っちゃったと言うと学生に見えるスタッフのお姉さんはリラックスしてくださいねと言ってくれる。なんだか全く緊張しないのは絵を描いているからだろうか。私は小さな頃から絵を描くのが好きだった。美術を学ぶために高卒の資格も取った。大学へと調べていくと金銭的な悩みは立ちはだかった。オープンキャンパスという無料の授業体験は楽しかったのだが教えをもらうことはどうも肩が凝る気がした。絵の中は私の心の自由な時間なのだ。発散であるし技術を上げるために人の線が加わるのは傷つくと思った。‥悩みながらも親の援助という学費があれば踏み出せた可能性もあると思うと言い訳の様だけどやはりそれも違う。もやもやしたままその後は父の死や家庭の病人が立て続いたこと、死を看取った私が精神科に入院するまでに至ったこと沢山の出来事の影に美大生になるかならないか?挑戦するかいなか?その霧は遠いものになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る