白い子供達

 〈白い教会〉に向ったしとかは、警備員に会釈をしてゲートを潜ろうとしていた。

「・・・すみません。ここのパスコードを教えて貰えませんか?」

「・・・はい?」

「ここに初めて来た時、今治さんがパスコードを入力していたので、ご存じでしたら、教えて貰えませんか?」

 しとかがゲートを越えようとして、警備員に止められた。

「残念ですが、部外者に教える事は出来ません」

「え!それじゃあ、何時になったら、此処に入れるンですか?」

「正式に入れるようになれば、通達が行くと思いますので」

 警備員はそれだけ言うと、とにかく駄目、と言って業務に戻った。

「・・・駄目、と言われて引けないのが、人の性」

 警備室の壁にあるパスコードを覚えると、しとかはゲートを潜り抜けた。

 ゲートから先には、芝生が敷かれており、寝転びたくなる衝動に駆られた。

 そこから、さらに長いトンネルを潜ると、視界が開けた。

「・・・これ、は」

 目の前に広がっていたのは、巨大な研究室の様な場所。

 そこ部屋の中心にはガラスで区切られた部屋があり、その中には性別、体付き、顔つき、多分性格も違うだろう子供達が、白い髪の毛に白い瞳の子供達が生活をしていた。

「・・・え、しとかさんが?」

 階下のフロア部分からつかさと椋田の声がした。

「そ、さっき警備から連絡があってね」

「それで?」

「追い返したって」

 そんなやり取りを見ていたしとかは、フロアに降りる事無く、今来たトンネルを戻って、警備員の目を盗んで〈白い教会〉から出ると、まっすぐに宛がわれている部屋に戻った。


「・・・どういう事なの?」

(見た感じ、あの子供達はデザイナーベビーの類かもしれない。だから、立ち入りが厳しく制限されている。それに・・・)

 そこまで考えて、しとかは頭を振った。

 昔からそうだ、と自分に言い聞かせる。情報が少ない時に、下手に踏み込むと碌な目に遭わないと、そう言い聞かせると、しとかはゆっくりと目を閉じた。


「一体、警備員達は何をしていんだ!」

 その報告を聞いて、つかさは怒鳴った。

「警備員の目を盗んで出入りしたから、彼らを怒るのは、あまり」

「分かってるさ!彼らはきちんと仕事を熟している事も理解している!問題なのは、どうして警戒音が鳴って、すぐに現場に行かなかったのか、だ!」

「警戒音が鳴ったのは、ほんの数秒だ。それに、あそこの警戒音は、度々、誤報をしている。落ち度は、設備提供をしている、こちらだ」

「・・・ハァ、分かった。すぐに、設備点検を強化させて、それから、警戒音が鳴る前後に誰が、〈教会〉に近付いたのか」

「接触した人間なら、分かっている」

 椋田は、そういうと苦笑いした。

「誰なんだ?」

「・・・津雲さん、だよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る