食事会2
「・・・美味しいです」
「良かった。選んだコースが口に合わなかったらどうしようかと思っていましたので」
「そんな・・・。優柔不断な性格なので、予め決めていただいてありがたかったです」
食後のコーヒーが出てくる事になると、互いの事について話を始めた。
「ここに呼ばれる以前は、両親と暮らしていました。単身で今はいますが、ゆくゆくは両親を呼びたいと思っています」
「ご兄弟はいるのですか?」
「一人娘なので、今でも連絡をするようにってちょっと、五月蠅いンですよ」
「羨ましい限りです。両親とは死別しているので」
「・・・・・・・・・」
重苦しい話題になってしまったので、しとかは話題を変えようと、空中に何かを書く仕草をした。
「どうかしましたか・・・?」
「何か考え事をするときは、こうするとアイディアが浮かぶので・・・。あ、あの。椋田さんって、どんな方ですか?」
「・・・椋田?そうですね、一言で言えば、研究バカ、ですね」
しとかから自分以外の名前が出たので、多少の不機嫌になったつかさ。
「研究バカのくせに、医師免許を持っているので、大学病院が完成したら、そっちに異動するように言われたと聞きましたね」
つかさの口振りで、しとかは話題の矛先を変えた。
「言われたって、その〈白い教会〉からですか?」
「・・・!そうでしたね、しとかさん。教えると言って誘ったのはボクの方でしたね・・・。答えられる範囲でなら、お答えしますよ」
挑発気味にテーブルの上で手を組んだつかさは、居住まいを正すとジッとしとかを見つめた。
「・・・し、〈白い」
「お、今治ぃ」
まさかの同じレストランで食事を取っているとは思わず、2人とも緊張の糸が一気に解けた。
「まさか、同じレストランにいるとはぁ」
「何の用だ、椋田」
「そんな冷たい事、言うなよぉ。なぁ、これから飲み直さねぇか?」
「断る」
「津雲さんはぁ、如何?」
「え、えっと・・・。お酒はその、強くなくて」
「マジでぇ・・・!じゃあ、はぁ・・・」
「溜息を吐きたいのは、ボクの方だ。用事がないなら、とっとと帰って寝ろ。ボクはともかく、しとかさんやお店に迷惑だ」
じとっと、つかさを見てから椋田は、しとかに愛想良く手を降ると駆け寄ってきたボーイと一緒に、店の出入り口に向かった。
「・・・ハァ」
「ビックリしましたね、つかささん」
「ええ。まさか同じ場所で食事をしているとは」
話の腰を折られた2人は、暫く黙ってコーヒーを飲んでいた。
「・・・それで、しとかさん」
「はい、何でしょうか」
緊張しているしとかを尻目に、フッとつかさは笑った。
「え、あの・・・?」
「いいえ。ここで話すような話題ではないな、と思いまして。ですが、キッチリと話しておかなければいけませんから。しとかさんが聞きたい事、知りたい事を」
「では・・・。〈白い教会〉について、教えて下さい」
「・・・・・・・・・」
「〈白い教会〉は、本当にこの学園都市の行政を司る場所なのですか?それなら、どうして人の出入りを制限しているのですか?」
「〈白い教会〉、というのは建物の外見からそう呼ばれているので、〈教会〉という機能は有してはいません。ですが、行政として機能しているのは事実です」
「なら・・・」
「人の出入りを制限しているのは、そうせざるを得ない理由があるからです」
「・・・その理由を聞いても良いですか?」
「場所を変えましょう。この先は、まだ公表していない内容になりますので」
つかさの提案に無言で頷くしとか。
頷いたしとかを確認すると、つかさはボーイを呼んで会計を済ませた。
「それで、どこに行くのですか?」
循環バスの最終便は出発しており、移動手段は限られていた。
「こちらです」
つかさを先頭に歩いて行くと、目の前に〈白い教会〉が見えてきた。
「まさか・・・」
「ええ、そのまさかです。お話をするなら、うってつけの場所だと思いませんか?」
つかさが提案し、案内をしたのは〈白い教会〉だった。
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