第14話 ざまぁ①

 僕達は少し早めにカラオケにたどり着くと予約済みの個室へと向かった。

 まだ誰も着いてないらしく、どうせなら歌って暇を潰すことになった。


 僕が歌えるラインナップは…アニソンしかない。今回の集まりは陽キャが開催しているのもあって女子たちもみんな明るい性格の子らしい。


 そんな中でアニソンを歌ったら空気が凍るのは一目瞭然。僕はあまり歌わない方がいいかもしれない。


 もし歌わないといけない雰囲気になったらメジャーなアニメの主題歌ならみんなで盛り上がれるはず。

 我ながら完璧な作戦だ。


「侑都歌わないのか?なら俺が歌っていいか?」


「ああ」


 隼人の歌をまず聞こう。カラオケに行き慣れてそうだし、見た目とは反してめっちゃ歌上手いとかあるかもしれない。


 そもそもカラオケで合コンを開催するくらいなのだから、得意じゃないと困る。


 僕は期待の眼差しを向けながら隼人が歌い出すのを待った。


 ちょっとして室内には音楽が流れだす。僕でも聞いたことがある国民的アーティストの代表曲だ。

 僕は歌えないけど、大好きな曲である。


「ふぅー」


「すげー。上手いな隼人」


 拍手をしながら僕は隼人を尊敬の眼差しを向けていた。

 隼人の歌はとても素晴らしいものだった。


「だろ〜。今日のために密かに準備してたんだよ。狙いの女の子が来るからな。お持ち帰りするにはまず心を射止めるんだ。歌声でな!」


「おう。いいと思うぞ」


「あ、時間なったからちょ店の前で女の子たち出迎えてくるわ。侑都は歌いながら待っててくれ」


 隼人はそう言うと足早に部屋から出ていった。

 僕は出ていったのを確認すると、せっかくだからと最近ハマっているアニメの主題歌を注文した。


「ふぅ」


 汗かいたな。久しぶりにカラオケきたけど、やっぱり一生懸命全力で歌ったら疲れるな。

 僕は前髪を整えるように汗をハンカチで拭うと、そのタイミングで部屋の扉が開かれる。


 キャッ、キャッと女の子たちの話しながらご機嫌そうな隼人。なんかイラっとするな。


「あ、君!」


 聞き覚えのある声、僕はこの瞬間に悟った。


 その声の持ち主はいきなり僕の隣に腰かけてくる。とても早口で僕のことを褒めながら、どさくさに紛れて手を繋いで来ようとしてきて慌てて突き放す。


「あぅ」


 わざとらしい声だ。

 その声で今まで僕のことを期待させておいて無残にも振ってきた女。


 髪を切ったくらいで長年付き添ってきた幼馴染のことが分からなくなるくらいは久城の性格。

 連絡先もいつの間にか消えていて、風の噂では僕の悪口を話しているとか。


「ごめんね。ちょっとシャイなんだよね?」


「…」


「そうだ、連絡先交換しよ。前約束したよね」


「そうですね。交換しましょう」


 交換して僕の連絡先が追加されたらどんな顔をするだろう。ふと反応が見たくなった僕は変なのかもしれない。


「ありがと、今度二人で一緒にデートいこう…え?」


 赤星さんは僕の連絡先を確認すると信じられないといった表情で固まった。

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