第8話 カウントダウン①

 次の日僕は大学に行くと赤星さんの姿を遠くに見かけてしまった。昨日のことはよく覚えているからな。もし見つかったら面倒なことになるのは分かっている。


 どうやら親しい友人と話しているらしい。僕の方へと歩いてくる様子はないし気にしないでいいかもしれない。昔から彼女は勘が良かったから警戒を怠ることはしないつもりだ。


 講義は終わった。赤星さんにバレないうちに大学の敷地内を出よう。これから事務所に行かないといけないし急ごう。


 僕は不審者よりも怪しい動きでこそこそと大学敷地内を出ると事務所のある方へと歩き出す。僕の通う大学は繁華街の近くにあるからか人が多く誰にもばれずに行けるだろう。


 それにしても相変わらずの相変わらずに人の視線が多い。多いのはやっぱり女性。今日は特に多く感じるのは気のせいだろうか。

 繁華街の近くというのもあるからか陽キャっぽい女性の視線が気になる。


 …なんか昨日も同じ目にあった気がするな。髪を切ったのがそんなに変なのか。そういえば講義中も変な視線を向けられてたな。

 もう髪を戻すことはできない…伸びるのを待つしかないか。


 なんとなく朝からボサボサしてた髪を自分なりに整えてみたのだがダサかったかな。もう余計なこと考えないで自分なりに生活しよう。

 髪はもうどうでもいいや。人生流されるままさ。


 と思っていた時、僕の肩が誰かに触れられた。


 僕は何事かとあわあわしながら振り返ると、金髪の女性に立っていた。綺麗な髪を腰まで伸ばしており、すべすべとしていそうなお肌。

 いい匂いが少し離れた僕の所まで香っており油断してしまったら顔が緩んでしまいそうになる。


「ど、どうしましたか?」


 あ、陰キャみたいな反応しちゃった…。あ、実際陰キャだから別にいいのか。綺麗な女性だしキモイとは思われたくないけども。


「あ、いやお兄さん。すごくかっこいいなって思いまして、つい」


 今彼女は何と言ったんだろう。僕がかっこいいと言ったのか。

 そんなあざと可愛い反応されてしまったら勘違いしてしまいそうだ。男ってちょろい生き物なんだよなー。


 少し女の子に優しくされただけでハートを射抜かれてしまう。僕が初恋崩れの後じゃなかったら惚れていたかもしれない。


「はは、僕お金なんて持ってないですよ?」


「お金?」


「え?」


「え?」


 何か裏があると思ったが彼女のこの反応。悪いことは考えてないようだ。だとしたらなんで僕に話しかけてきたんだ?


「いや、なんでもないです。なんかすみません」


「私、そこの大学に通う和泉奏って言います。どうぞお見知りおきを」


「僕はえーっと、侑都です。同じ大学です。よろしくお願いします」


 僕らはぎこちなくお互いに頭を下げた。


「じゃあ、失礼します」

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