第55話 あとはギルドに行ったら今日は上がりだな


 フッカケン商会から離れてもう一度休憩スペースへ、さっきよりもちょっと混みあっているけど席はまだ空いていたのでその1席を陣取る。


「短剣以外の買い取り金額を聞かずに逃げっちゃったけど売らないからいいよな?」


「大丈夫です!というか次回から鑑定と買い取りは私かイヨーナが行きますから、トーイは吹っ掛ける商会には近づかない方がいいですね!あのアルアル言ってた人は危険アル……ってうつった!」


 危険というか面倒くさそうだな、美人さんだったけど出来れば関わりたくない相手だった。でも任せっきりって訳にもいかないだろう。


「まあそこら辺は追々決めていこう、短剣の買い取り金額が銀貨5枚だから銀貨6枚と銅貨5枚で売るけど良いか?」


「オッケー、今手持ちが無いから明後日持ってくるね。それで短剣は持って帰っていいかな?」


 イヨーナは何でもないように言ってるけど何言ってんだ?


「駄目だよ、まだ売ってないんだから明後日お金払ってからね」


「ちぇっ、そこら辺はしっかりしてるわね。分かったわよじゃあ明後日ね」


 親しき中にも礼儀あり、同じパーティメンバーだからこそしっかりと割り切らないとね。なあなあにはしたくない、てかイヨーナって甘くしたらそこに付け込んでくるからちょっと厳しめくらいがちょうどいい気がする。


「それと皮の帽子とスクロールと薬はだれが持つ?」


「帽子はトーイでいいんじゃないかな?」


「でも、ソニアが一番囮になるからソニアに被ってもらった方が良くないか?」


「ソニアには多分攻撃が当たらないと思うから、一番前線に出るだろうしトーイが使ったら?」


 まあ確かにソニアに攻撃が当たるところを想像できない、じゃあ使っちゃっていいか……


「じゃあ俺が使うけどこれはパーティの資産にするから売るときに山分けね。スクロールと薬はイヨーナが持っててヤバいと思ったら使ってくれ」


「いいの使っちゃって?」


「使うために売らなかったんだから使ってくれていいよ。ただ状況は見てヤバいときに使ってな」


 無意味に使われるのも問題だし、エリクサー症候群出されても困るしで難しいところだけどイヨーナならうまく使ってくれるだろう。理想は全員がスクロールと薬を持つことなんだけどそれはちょっとずつ揃えていこう。


「これで今回の分配は終わりですよね?」


「いや、まだクエストの報告があるからギルドへ行くよ。報告と貯金だけだから別に来なくてもいいけど?」


「そう?下では行くって言ったけどそういう事なら私は遠慮しようかしら」


「私は行きますよ!メグちゃんにも会いたいし、トーイと一緒に歩きたいですから」


 そういう事を面と向かって言うかね……


「そういう事をよく臆面もなく言えるわね、トーイも照れてるわよ?」


 照れてないし!ちょっと恥ずかしいだけだし!


「あう、またやっちゃった……でもホントのことだもん」


 開き直りましたな、それを見たイヨーナがニヤニヤしつつ、


「だってよ色男さん、私もあなたと一緒に歩きたいからやっぱりギルドに行こうかしら」


 俺の左腕に腕を絡めて抱き寄せる。これ絶対に俺とソニアをからかって楽しんでるだろう。


「あー!またそうやってトーイに色目使ってる!駄目だって言ってるでしょ!」


 見事にイヨーナの誘導に乗っかって荒ぶるソニア、俺の右腕に腕を絡めてイヨーナから引き離そうとする。この体勢って昨日もなったよなぁ、その時は警備の兵士さんに白い目で見られたんだよな。


「ちっこいつらまたかよ……見せつけやがって、チャラいイケメンは全員爆ぜればいいのに」


 ほらぁこうやってまた周囲の心証が悪くなるじゃん。特に俺に対する心証が……て、誰がチャラ男だ!



 

 謂れのない風評被害に憤慨しながら両サイドにソニアとイヨーナを侍らせ、ギルドのスイングドアを二人に開けさせて(両手が使えないので) 中に入ると、

 

「よぉ、待ってたぜ?」


 なんとなく見覚えのあるスキンヘッドのマッチョ……具体的には昨日投げ飛ばしたマッチョ、が仁王立ちで待ち構えていた。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マンホールに落ちたらそこは異世界でした〜スマホでつながる妹と現地のヒロインどっちが良い?〜 ごっつぁんゴール @toy1973

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ