第54話 フッカケン商会ダンジョン前店


 

 チャイナドレスにお団子ヘアってそれっぽい格好の美人の推定店員さんが、がっちりしたひげヅラの冒険者風の男と買取の商談をしてるっぽい。推定店員さんがこっちに目を向けて、


「アイヤーこれは二枚目のお客さんアルねちょっと待っててほしいアル、すぐにこっちのムサイお客さんを終わらせるアルよ」


「誰がムサイんだよひでーなリンリンちゃん!てか誰かと思ったら初期装備の兄ちゃんか、もうチョイかかるから待ってな。しかし相変わらずデカいけどちっこいのとベッピンのペッタンコ連れてんな「誰が初期装備だ!」「誰がちっこいのですか!」「誰がペッタンコよ!」うおっビックリした!」


 失礼な、ほかの2人はともかく俺はもう初期装備じゃねえぞ!しかし推定店員さんの名前、リンリンって言うのか……名前までそれっぽい。


「ホラホラさっさと帰るアル!どうせ高く買い取ることは出来ないアルから居座るだけ無駄アルよ。わたしと二枚目のお兄さんとの出会いを邪魔するんじゃないアル!」


「ちぇっ分かったよ、今度は高く買ってくれよ?待たせて悪かったな初期装備の兄ちゃん、嬢ちゃんたちもな。じゃあなお疲れさん」


「ハアお疲れさま」


 初期装備の兄ちゃん呼びは気に入らないけど結構気のいい人だった冒険者風の人が、買い取りの査定を終え挨拶をくれてカウンターから離れていく。挨拶を返してカウンターに向きなおると推定店員さんがニッコニコの笑顔で待ち構えていた。


「お待たせいたしました、フッカケン商会にようこそアル。買取ですか?鑑定ですか?デートの申し込みアルか?それなら仕事が明けたら時間とれるヨ、食事に行くアルか?バーに飲みに行くアルか?いきなり連れ込み宿はムードが無いから勘弁アルが強引なのも嫌いじゃないアルよ」


「うがー!イヨーナだけじゃなくあなたもですか!買取です!断じてデートの申し込みじゃないです!!トーイは私のですからあげませんよ!」


「ソニア落ち着け、買取じゃなくて鑑定だから……あとソニアのじゃないから。店員さん、デートはまた今度ということでこの4点の鑑定をお願いします」


 荒ぶるソニアを落ち着かせて、推定店員さんのお誘いを断り、来店の要件を伝える、って忙しいな!


「アイヤーつれない二枚目さんアルね、仕方ないアル今回はあきらめて次回に賭けるのが吉ネ。じゃあお仕事するヨそして出来る女のアピールするネ、この4点の鑑定アルねちょっと待つヨロシ。デルトさんお仕事アルよーきびきび働くネ」


 推定店員さんが奥に向かって声をかけると奥からちょっとメタボ気味の中年男性が出てきて、


「アルアルうるさいよ鑑定だろ?ちゃっちゃとやっちゃうアルよー。─────ホイっと完了。「駆け出しの短剣」「皮の帽子」「小炎」のスクロール、「水薬」だな」


 とサクッと鑑定してくれた。スクロールと薬はイヨーナの言う通りだったな。


「やればできるんだから、文句言わずにきびきびやるヨロシ。お兄さんそういう事でお代は銀貨2枚か銅貨20枚ですヨ。ゆっくりでいいアルよ~」


 愛想笑いに猫撫で声で代金を伝えてくる推定店員の人に対して、メタボ気味の司祭の人が、


「何気色悪い声出してるんだ?ああ、そこのあんちゃんか……リンリンは二枚目に目が無いからな。あんちゃんも災難だな、さっさと支払って帰った方がいいぞ?こいつ絡みだすとウザいからな」


「デルトさん何を言ってるアルか!ここは同僚の援護をするところでしょうが!さあ私の溢れる魅力をお兄さんにつらつらと聞かせるヨロシ!」


「つらつら?まあツラはいいな……あと……えーとなんかあったか?」


「まだまだあるでしょ捻り出すヨロシ!じゃないと捻り上げるアルよ!」


 コント?漫才?が展開されている……面倒くさいけど短剣の買い取り代金が分からないとイヨーナに短剣を渡せないし聞かないとな……面倒くさいけど。


「すいません、それで短剣の買い取り代金ってどれくらいですか?」


 なんか司祭の人の首を締めあげてる推定店員さんに声をかける、司祭の人顔色が紫になってるけど大丈夫?


「アル?買取りですか?」


 あれ?みたいな言い方してるし……


「いえとりあえず金額だけ聞いとこうかなって」


「そうアルか……そこの長身の方が持ってらっしゃる短剣が2段階目アルから更新するアルね?じゃあそっちの2段階目の短剣をウチが買い取るから売るヨロシ」


 いきなり商談始めてきた、それに一目で短剣の段階を見切っちゃた。そこら辺はさすがプロだな。


「短剣はイヨーナの私物なので後で彼女と話してください。それでいくらですか?」


「そうアルね銀貨5枚アルね、交渉は受け付けないからどうするか選ぶヨロシ。ちなみに彼女の短剣は銀貨3枚で買い取りネ」


 なるほどなるほど、てことは売り値は金貨1枚ってことね。


「ありがとうございます。また来ますね」


 金額は分かったしさっさと退散しよう……てか司祭さんピクピクしてるんだけど意識あるのか?


「アイヤーもう行くアルか、ホントにつれない二枚目さんアルね。待ってるからまた来るヨロシ」


 やっぱり二枚目とかイケメンとか言われるのは慣れないな……

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