第53話 O・HA・NA・SHI


「さてと、じゃあイヨーナお話ししようか?」


 フッカケン商会に鑑定と買取をお願いする前に、ある程度パーティとして拾得物をどうするか決めとかないとな……


「ソニアいいかな?確かフッカケン商会は買い取り額の倍額で売り出してんだよね?」


「そうなんですよ、暴利だと思いますよね!」


「俺は暴利だとは思わないんだよなー、それくらいの売り値になると思うんだけど……まあ今日はその話じゃないから」


「むう、そうですか」


 ぶっちゃけ俺がどう思うかとかどうでもいいしね。


「じゃあ買取金額の5割増しの金額出してくれたらパーティ内で売るよ。これでイヨーナ的には売り値よりも安く買えるし、パーティとしても買取金額より高く売れるし両方とも得になるよね?」


「あら、売り値で買い取れって言われるかと思ったわ。でも確かにそれなら両方とも得よね……」


 あれ?交渉してくると思ったのに素直に聞いてくれるのかな?


「そこで相談なんだけど、もう少しこっちの出す金額をどうにかできないかしら?」


 やっぱり交渉してくるよね~そこはイヨーナだなぁある意味安心したわ、目途にしてた金額より高めに設定しといてよかった。でもいきなり言う通り金額下げるのも芸がないよな、


「え~結構頑張って考えた金額なんだけど……かなりバランス良くない?」


「うんそう思うよ?他所のパーティならありえないくらいパーティ・メンバー両方のこと考えてくれてる」


「ありえないの?」


「うん、結構パーティ内の力関係とかが絡むからアバウトだけど、大体1割引きか売り値を払えってところ多いって聞いたよ?」


 力関係とかで値段が上下するの?リーダーは安かったり仲悪かったら高かったりするのかね、そんなのメンバーから不満が出るだろうに……そんなんで不満が溜まって戦闘中の指示に反抗されたらたまったもんじゃない。


「ウチはそこら辺はしっかり決めとこうよ、そんなことで遺恨は残したくないし……ソニアもそれでいいかな?」


「いいですよ~、トーイにお任せします!」


 う~ん、清々しいほどに投げたな、ソニアはあまりこだわってないのか。


「それでイヨーナはいくらくらいなら出せる?」


「そうね、1割増しでどう?」


「さすがに欲張りすぎだ、4割だね」


「あらあらもう少し大目に見てよ。2割」


「3割、ここまでだ。これ以上は下げられない」


「そこを目途にしてたのね……了解、それでいいわよ」


 あらま、あっさり読まれたか。そのうえで今回は俺の顔を立ててくれると。


「じゃあまあそういう事で、ウチのパーティではダンジョンの拾得物は、買取金額の3割増しでパーティ内販売するからそのつもりでいてくれ。そしてその金は買わない2人の山分け分を抜いて分配したあと、残金をパーティ資金に入れるからそれもそのつもりで」


 ちょっと処理がめんどいけどこれが一番公平のはず。まあ揉めることなくスムーズに決まって良かった良かった。


「トーイって優しいし良いリーダーだよね。大体どこのパーティでもパーティを優先するのに、トーイは基本メンバーを優先してくれるし。ソニアもそう思わない?」


「なんですかいきなり……まあトーイは優しいですし良いリーダーですよ。私もそう思ってますし、イヨーナだけじゃないですもん。今から狙ってもトーイは私のですからあげませんからね!」


 俺が1人ですんなり決まったことに安堵していると、なんか女子同士でコソコソ話してる。ソニアが猛ってるな何の話をしてんだ?

 




 ダンジョン入口に併設されている通称「吹っ掛ける商会」ことフッカケン商会の出張所のカウンターに声をかける。


「すいません、鑑定お願いしたいんですけど!」


「アイヤー、お客さんアルか。ちょっと待ってほしいアルよ」


 なんか濃いのが出てきたぞ……




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る