第51話 予感って信じます?


 イヨーナのフォローを受けてオーク先輩を倒しソニアの方に向き直ると、未だにソニアがオーク先輩たちと戯れておられる。いやぁすげえわ……


「ソニア、1匹潰したからもう1匹もらうぞ!」


「はい!ならこっちのオークをお願いします!」


 2匹相手取っていたのにいきなり1匹を切り離して離れていく、え?今どうやってやったの?いきなりハブられた方のオーク先輩もキョトンとしてるじゃん。


「今は深く考えずにこいつを仕留めてしまおう!」


 イヨーナにというより自分に言い聞かせてハブられたボッチ先輩に斬りかかる。ボッチ先輩の方も気を取り直して俺に向きなおる。でもいいのかな、俺だけに気を取られて?


「せい!」


 死角からイヨーナが足を斬り付ける、これで後はトドメだけだな。先輩にトドメを刺してるとソニアの方も終ったみたいでこちらにやってくる。


「出来るかなぁってやってみたけど、やれば出来るものですね〜というか斥候の人の真似した方が動きやすいです!」


「いや、俺には出来ないから!てか、なんで出来るの?」


「私は頑張れば……いえ、できるもん!で?なんで出来るの?」


「え?縦横から斬り付けられたら遅い方の斬り付けに合わせてこう斜めにヒュンって」


 また謎理論が展開されている……イヨーナは何とか解読しようと聞き入ってるな、ソニア理論の解読はイヨーナに任せて漁ろうかね。


「え、遅い方に合わせるの?早い方は?」


「早い方はもう避けてるじゃないですか、だから遅い方に合わせるんです!」


 もう避けてる前提なんだな……えーと稼ぎは先輩3匹で銀貨6枚に銅貨13枚か大漁だな、


「もう避けてるのね……それで遅い方に合わせるのか。それで早い方の避け方だけど……」


 おー喰い下がってる、やるなイヨーナ。その調子で理解して俺に教えてくれ。


「よーしソニア理論の講義はそこまでにして移動しようか。東側の通路に行くか?」


「なんですかソニア理論って!すごく分かりやすく話してるのに!」


「そうね分かりやすい分かりやすい、それでさっきの扉はどうするの?」


「ソニアにはあれが分かりやすいのか?新発見だな……扉はとりあえず直で行けるところを回りきってからでよくね?」


「2人ともひどくないですか?」


 だってホントに分かんないんだもん。


「それだと行って戻っての二度手間にならない?」


「そうなんだよなー、けどリスクは極力無くしたいし。ソニアはどうしたい?」


 こういうことは3人で決めたい。


「もういいです知りません!」


「ごめんごめんって、謝るからどうしたいんだ?教えてくれ」


「ホントにもう!でも今回は私もトーイに賛成です。二度手間でもここは安全にいきましょう」


 


 東側の分岐点まで戻っている間に1回ワンコ2匹との戦闘があったけど、「仮睡」の魔法で眠らせて倒した。両方ともトドメは俺が刺したのでこれでクエストノルマ達成、今日上がったらギルドに報告に行ってこよう。


「ギルド報告一緒に行く?」


「私は行くよ確認したいし」


「もちろん私も行きますとも!2人きりにはしないですよ!」


 理由はそれぞれだけど結局来るのね、それとイヨーナにその気は無いと思うからソニアはそんなに目くじら立てないこと!


 上がったらイヨーナと短剣の所有権の折衝とクエストの結果をギルドに報告、教会に帰ったら神父さまに真っ黒な壁のことと階段の圧のことを聞く……こりゃあ上がった後の方が忙しいかも。


 そのまま東側の通路に入ってみる……西側の通路みたいに圧を感じることもない普通の通路だな、あの圧っていったい何なんだ。だけど……


「えらい長い通路だな、なんか嫌な予感がする……引き返そう」


「そうだねここは引き返したほうが良さそうだね、なんか気になるから上がったら情報収集しとくよ……」


「あっそれ助かるよ、頼んでいいか?金とかいるならパーティ資金から少しは出すよ?」


「出してくれるの?前のパーティとか自腹だったし、どこのパーティも情報収集は大体斥候が自腹でやってるって聞いたけど?」


 すすんで情報収集してくれるのはありがたい、でも資金は自腹とかブラック企業かよ……これは後で聞いた話だけど、斥候は宝箱の鍵開けとかギミックの処理等ダンジョン攻略になくてはならない技能を持っているのに、戦闘能力が低く下層に進むほど戦力とならないから、パーティ内で戦士や魔法使いに比べて低く見られる傾向にあるそうだ。そのためパーティの雑用を振られることが多いんだって。パワハラ?


「ウチのパーティでは情報収集に使った費用は出来るだけ出すよ。そのかわり情報は共有する事と費用の明細出してね」


「ですね、情報のあれこれは2人に任せますけど、費用の明細が出るなら資金から出してもいいんじゃないですか?」


「共有するする、明細出す出す!費用出してもらえるなら願ったりだよ!」


 イヨーナが喜色満面で抱き着いてくる。


「あー!何どさくさまぎれに抱き着いてるんですか!」


 ソニアが気色ばんで引き離しにかかる。


「じゃあそういう事で今日は上がろう。てかイヨーナ、ダンジョン内では危ないからやめようか?」


 




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