第49話 先輩パーティの戦闘


 イヨーナが宝箱を調べてる、今回は罠が有るようで慎重になってるな。


「これも毒針の罠だね、さっきよりちょっと複雑だよ」


「あれ変じゃね?これってさっきのワンコが罠仕掛けたのか?」


「その前に湧いた奴じゃないですか?……そっかトーイって落人だから知らないかもですけど、ダンジョンのモンスターって湧いて出るんですよね」


 は?湧くってどゆこと?


「まず、ダンジョンと普通の洞窟の違いって分かります?」


「いや、分からないな」


「ダンジョンには絶対にダンジョンコアってものがあります、そしてコアが無いものは洞窟って扱いになります。それで、ダンジョンのモンスターってダンジョンコアが生み出しているんです、なかなか見る機会はないですけど湧くところを見たって冒険者は結構います」


 ここまでは良いかと問うようにこっちを見るソニア。頷いて続きを促す、


「そして生み出されたモンスターは何故かお宝を持ってることが有ります、それを宝箱にしまったものを私達が奪っているって感じです」


「俺たちゃ盗賊かい」


「それで昔は斥候のことを盗賊って言ってたんですよ」


 そうつながるのか……そりゃあモンスターからしたら俺たちは盗賊というか強盗だよな……いきなり押し入って皆殺しにされてお宝奪われるって。


「てか、なんでお宝なんか持ってんだ?」


「生み出されるときにダンジョンコアが持たせるんじゃないかって言われています。だからダンジョンコアに近い下層に行くほど強力なアイテムが手に入るんじゃないかって」


「解説ありがと宝箱開いたよ。中身はスクロールと薬だった」


 スクロールってなんだ?


「スクロールは魔法が封じ込められている巻物ですね。便利なんですけど1回使い切りなんですよね」


「ほー、じゃあ未鑑定の状態では使えないからあとで鑑定だな。ってか鑑定っていくら位お金かかるの?」


「吹っ掛ける商会では一律銅貨5枚ですね」


 鑑定で稼ぐ気はないってことか、フッカケン商会をソニアは吹っ掛ける商会とか言ってるけどそんなに悪いイメージないんだよなぁ。多分これもサービスのつもりなんだろう、稼ぐ気なら他にやりようはあると思うし。


「了解、鑑定代金は基本パーティ資金から出すってことでいいか?」


「待って、短剣の鑑定代金は私が出すから所有権も私にくれない?」


 これは……難しい問題だな。店で買うなら自腹で買ったら自分のものでいいけど、ダンジョンでの拾得物はどうしよう?要らないものは売ってパーティ資金を抜いた後山分けする、でも武器とか防具とか使えるものが出たときの所有権はどうするものなんだ?


「今回はパーティ資金から出す、所有権をどうするかは上がったあとで話し合おう」


「あら残念、分かったわ」


 イヨーナも抜け目ないな……てか仲間相手にこういう駆け引きって普通にするものなのか?こういうのはあんまり好きじゃないんだけどな。


「さて、これからどうする?イヨーナの情報があったのはここまでだから、東の突き当りの扉の先は全くの未知になる。そこに行くか戻りつつ遭遇戦を繰り返すかだな」


「知ってる3部屋を往復してるだけでもいいけど、まだ魔法に余裕があるし私は先に行きたいかな」


「私も先に行きたいですね。どのみちいつかは行くんですし今日でもいいでしょ?」


 前のめりだな、まあ2人ともがそう言うなら未知の領域に行ってみましょうかね。





 部屋を出て少し歩きもうすぐ分岐点というところで前方が明るくなる。別の冒険者のパーティか?と思いつつちょっと警戒してると、いきなり戦闘が始まった。


「他のパーティの戦闘だなちょっと見学しとこうぜ」


「トーイ好きですよねそういうの……まあ前回はそれでイヨーナを助けられたけど」


「……そうなんだ」


 いいじゃん、先輩冒険者の戦闘は参考になるって!


 先輩パーティは6人のフルパーティだな、前の2人が戦士っぽくて剣の人と斧の人が居る。もう一人は斥候かな?そして後ろ3人のうち2人がローブっていうのかなゆったりとした服を着てて、最後の1人はソニアみたいな軽装だけど胸当てで守りを固めてる。相手はゴブリンくん9匹のグループって俺らなら逃走一択だな。


 それが、


「今、避けながら一瞬でゴブリンくんの両腕を斬ったよな?」


「うん、一撃目が見えなかった……」


 え?俺二撃とも見えなかったけど?


「うわぁ斧のヒト一撃でゴブリン真っ二つにした……」


「斥候の人牽制上手いね……」


 前衛の3人の技とパワーとコンビネーションに魅入っていると後衛の人から、


「燃やすよ!」


 と女性の声があがった、その瞬間前衛3人がバックステップでゴブリンくんから離れる。

 一拍おいてゴブリンくんの群れの中央で炎が点火したと思ったら、その炎が放射状に広がっていってゴブリンくんを焼き払っていく。

 前衛3人は油断なく生き残りが居ないか確認しているが、ゴブリンくんは全員焼け死んだようで身動きもしない。生きてたら熱くてジッとしてられないよな。

 それを確認して3人とも武器を納める。


 炎が消えて斥候と後衛の人が漁り始めると、前衛2人は周辺を確認し始める。もちろん俺達を認識して警戒もしているだろう。


 漁り終わったら、剣の人を前列中央に軽装の人を後列中央に置いた二列横隊を組んで前進していく。その時後列のローブを着た女の人がウインクを飛ばしてくる。余裕だな……


「すげぇ、一分の隙も無かった」


「ウチ等よりかなり高位のパーティだね」


「最後のアレって魔法ですよね?」


「一撃でゴブリンくんを全滅させる魔法か……」


 多分第3階梯の「大炎」だろう。基礎コースのときマスターに教えてもらった、魔術師系最初の範囲攻撃魔法。

 俺は最低レベル9にならないと使えない魔法、魔法使いはレベル5であれを修得するのか……アレックスさんの言う通り魔法使いは仲間にしたいな。


「前衛の3人も凄かったな……」


「剣の人の一撃目が見えなかったのが悔しいですね」


「斥候の人の牽制は参考になったね。私達の戦法ではあの動きを全員出来ないといけないと思う」


 見といて良かった……今はほとんど参考にならないけど、あの高みにいつか届くと考えるとわくわくしてくる。あと斧の人のことも言及してあげて……




 





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る