第38話 魔法を実戦で使おう!

 

 神父さまの解説のおかげで、使うべき魔法の選別も出来たし有意義な朝食だった。


「そろそろイヨーナも来るだろうし用意しとこうか?」


「そうですね」


 初期装備の鎧を着用し、愛剣の「駆け出しの剣」を腰に佩き準備完了。

 玄関口に回ると革のベストを着て短剣を腰の後ろに装備したイヨーナが教会のお弟子さんと話している。


「あっトーイさん、あなたにお客様です。私はソニアを呼んできますね」


「ありがとうございます。お願いしますね」


 お弟子さんはニッコリ微笑んでソニアを呼びに行ってくれる。それを見送ったあとイヨーナに向き直って、


「おはようイヨーナ、今日からよろしくな」


「おはようトーイ!こちらこそよろしくね?」


 自然に腕を絡めてくるな……こんなのソニアが見たら……


「あーー!なにやってるんですかーー!」


 ほら……こうなるんだよ……


「なにって今日からよろしくねって挨拶しただけだよ?ソニアも今日からよろしくね♡」


 大分遠慮がなくなってきたな、良いことなのか?


「イヨーナ離れて?それとソニアも落ち着いて……」


「あー!トーイのその顔は「離れて」とか言いながらイヨーナの胸を……胸……ごめんなさい何でもないです」 


 あっ、イヨーナの額に青筋が……まあ確かにイヨーナはソニアに比べると、え〜とその〜お胸が寂しいところがまぁ……ある。でも背が高くてスラッとしたモデル体形なんだよ?


「ソニアも煽るなよ!あとイヨーナも良いから離れて!もう行くぞ」


 なんでダンジョンに入る前からこんなに疲れなきゃならないんだ?頼むから普通に行こーぜ?





 さてなんだかんだでダンジョン第1層入口付近に到着。とりあえず俺とソニアの新魔法の試しをやっときたいな。


「まず初めに右側の通路を行って1回俺の魔法を試したい。その後はソニアの「彫像」も試したいかな」


「了解、トーイの魔法って「仮睡」だよね?」


「うんそうだよ、とりあえず敵を見つけよう」



 

 しばらく歩いていると前方に4匹のオーク先輩が居るこっちを向いてるから程なく俺達に気付くだろう。


「俺の魔法で眠らせる。眠ったのが2体以下なら眠ったやつは放置で3人がかりで2体を潰す。その際の囮役はソニア頼む」 

 

「了解」


「え?ソニアが囮?」


 イヨーナが怪訝な顔をしてるが説明してる暇はない。


「向こうも気付いた!始めるぞ!────────────「仮睡」!」


 初めての魔法だけどスムーズに詠唱し魔法を発動させる。3匹効いた!上等!


「起きてる奴にソニア囮!俺が斬り付ける!イヨーナは寝てるやつを確実に1匹ずつ倒してくれ!」


「了解!」


 ソニアがオーク先輩の前に躍り出る、それめがけて先輩が短剣を突き刺して来るがソニアはヒラリと躱す……相変わらずスゲェな……


「え?今のどうやって躱したの?」


「イヨーナ!説明は後だ!今はやることやれ!」


「ごめんなさい!行きます!」


「それで良い!はぁぁー!よし潰した!ソニア、トドメを!俺は残り2体を倒す!」


 ほどなくして戦闘が終了。いや完勝だね!死体漁りを手分けして行ったあと反省会。


「確かに「仮睡」は強力だな、頼りたくなるのも分かるわ。それとイヨーナ、誰かが囮になってその間に潰すのがウチのやり方だから。慣れたらイヨーナにも囮になってもらうよ?」


「それは分かったけど……ソニアさっきのってどうやって躱したの?特にあの斬り上げからの振り下ろし」


「斬り上げはスッて躱して、その後オークの左足がダンッてなったから、振り下ろしが来ると思ってヒョイって」


 相変わらずの説明下手だなさすが天才……イヨーナも首捻ってるし。


「ソニアに聞いても意味不明だから……こいつは天才って事で納得してくれ。さて次はソニアの「彫像」を試すって言ったけど、ゴメンまず俺がもう1個試したい。良いか?」


「いいですけど何を試すんですか?」


「攻撃を捌きながらの詠唱を試してみたい」




 出来れば少人数、ボッチくんとかが最高だったんだけどなかなか現れないなぁ。眼の前に居るのも7匹のゴブリンくんのグループ。イヨーナがパーティ壊滅を思い出したのか震えてる……


「どうする?やり過ごしても良いけど?」


 イヨーナが震えを抑えるように自分の両肩を抱き締めて、


「大丈夫……大丈夫だから」


「分かった……ソニア「彫像」と「仮睡」の二段構えで行く。もし4匹以上残ってたら逃げるぞ。方向は後ろで殿は俺がやる。良いな?」


「「了解」でも大丈夫?」


 ソニアが心配そうに聞いてくる。


「大丈夫だから、二段構えも試したかったしいい機会だって事で」


 不意討ちで試したかったけど気付いたようで3匹ほど突っ込んでくる。詠唱間に合うか?


「────────────「仮睡」」


「──────────────「彫像」」


 ソニアの詠唱がちょっと長く俺よりワンテンポ遅れた……けどなんとか全員に効いたみたいだな。


「うわぁソニア危なかったな……詠唱があと一拍遅れてたら攻撃喰らってたな……っと今のうちに削るぞ!」


 6匹倒したところで最後の1匹が復活、ちょうどいいやこいつで試そう。


「こいつで動きながらの詠唱を試す!イヨーナはフォロー!ソニアは倒したやつの確認、生きてるやつがいたら潰しといて!」


 言いながらゴブリンくんに接敵、2人共動き出した。


 ゴブリンくんの攻撃を、躱したり剣で逸らせたりしながら詠唱する、やっぱり難しいな躱して攻撃しながらとかも試すつもりだったけど無理だなこれは。捌くだけで精一杯だわ……


「──、────っと────っほ──「仮睡」」


 よし効いた、と思った瞬間イヨーナが後ろから刺し貫く、恨みがこもってるなぁこれ。


「よし終了……漁り終わったらちょっと動いて休憩しよう」



 


 

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