第37話 魔法


『あなたはレベル3になりました。あなたは呪文を思い出しました、第1階梯魔法の使用が可能になりました』


 やっぱり天の声は気持ち悪いな……ってかそんな事より魔法だよ!ついに魔法が使えるようになった!

 天の声が聞こえたあと意識の底からフワッと呪文と魔法の効果が浮かんで来て、使える回数が認識できるようになった。

 

 今回覚えた?思い出した?魔法は4つで使える回数も4回。何故認識できるのか分からないけど出来るものはしかたない。


「やっと魔法を使えるようになったけど、実際に使いようがあるのは「仮睡」と「鉄身」くらいで「小炎」と「示標」はあまり使えないな……」


 意識に浮かんだ魔法の効果を比べてみての感想で、実際は違うのかもしれないから神父さまに聞いてみよう。




 食堂に行くとすでにソニアがニコニコしながら着席してる、神父さまはまだ来てない。いつも早くからいらっしゃるのに珍しい事もあるもんだ。

 

「おはようソニア、なんか嬉しそうだけど良いことあったの?」


「おはようございます!聞いてください!レベルが2も上がったんです!」


「おおー!ということはレベル4になったんだ?」


「そうです!第2階梯の魔法も覚えましたし、魔法の使用回数も増えました!」


 それは心強い。ソニアの回復魔法はウチのパーティの生命線だからね、回数が増えるのは純粋にありがたい。


「俺もレベルが1個上がってレベル3になったから!魔法も覚えたから!でもなんでソニアは2つで俺は1つだけなんだろうな?」


「上級職はレベルアップが基本職より遅くなりますね。それとトーイくん魔法の習得おめでとう、これでスペルユーザーの仲間入りですね」


「あっ神父さま、おはようございます」


「神父さまありがとうございます」


 神父さまもいらっしゃったので食事が運ばれてくる。食べながら聞いてみた、


「神父さまお聞きしたいんですけど、なんで魔法の使用回数が増えたりするんですか?」


「漠然とした質問ですが聞きたいことは分かりました。何故魔法の使用上限回数が存在するのかという質問でいいですか?」


 そういうことになるのか?まあ熟練の神父さまがそう解釈したならそうなんだろう。俺も上手く質問できないし……頷いとこっと。


「長くなりますので先に食事を済ませてしまいましょう」


 食事を終わらせ食後のお茶を飲みながら、神父さまが嬉しそうに説明を始めた。


「まず前提として、術者は自分の精神領域を使用して魔法を発現させます。ここまでは良いですね?」


 俺達は揃って頷く、


「魔法使い系と僧侶系で使用する精神領域に違いがあり、それぞれ使用回数が独立しています。そのためどれだけ魔法使い系の魔法を使用しても、僧侶系の魔法の使用回数は減りません。……まあこれは魔法使い系と僧侶系の両方を習得する「司祭」にしか基本意味のない知識です。なのでそういうものだと覚えてください」


 ここで紅茶をひと口し唇を湿らせて、


「魔法使い系も僧侶系もそれぞれ7つ階梯がありますね?それはつまりそれぞれの精神領域で、さらに7つの領域に区分されているということです。その区分された領域を階梯と呼称しています。ここまでは良いですか?」


 なんとか……なんとかここまでは理解できてる……と思うので頷く。


「ある魔法を使用すると、その魔法の属する区分された領域つまり階梯が疲弊します。そして一定以上疲弊してしまうとその階梯は使用できなくなる。その使用できる回数がその人の使用上限回数になります。そして熟練していくと1回の魔法の使用での疲弊が少なく済むので、その階梯の使用上限が上がっていきます」


 なるほど、多分理解したと思うので確認、


「つまり、その階梯の魔法を使い慣れたので、使用できる回数が増えるという認識で良いですか?」


「厳密には違うのですが……平たく言うとそういう事ですね。ちょうどいい機会ですので、2人の魔法の使い勝手みたいなものを簡単に教えておきましょう」


 それは聞こうと思ってたことなのでありがたい、


「お願いします」


 ソニアも前のめりになってる。ってかさっきの話聞いてなかったな?


「まずは僧侶系の第1第2階梯で重要なのは、第1階梯では言うまでもなく「封傷」ですね。しばらくは回復はこの魔法に頼るしかないので、回数の管理はしっかりと行うこと。そして第2階梯で重要なのは戦闘では「彫像」と「静寂」です、特に「静寂」は敵の魔法を封じる魔法なので、スペルユーザー相手には必須級の魔法です」


 ソニアがコクコクと数度頷き、


「そして「彫像」は相手を金縛りにして動きを封じる魔法ですね。原理は違いますが魔法使い系の「仮睡」みたいなものですかね?」


 と補足した、神父さまがあとを引き継ぎ、


「相手の動きを止めるという効果は一緒ですね、ソニアが言うように原理は違いますがね。あと探索面で重要なのが「透視」ですね、これは宝箱などに張られている罠を見破る魔法ですね。斥候が居るなら良いのですが「暗殺者」が宝箱の罠解除を担当しているなら必須です……ええホントに必須です」


 なんか神父さまが黄昏ている。てか「暗殺者」が罠解除するんだ……


「さて次はお待ちかねの魔法使い系の説明ですね」


 神父さまの解説が続く、


「魔法使い系の第1階梯で重要なのが戦闘では「仮睡」探索では「示標」です」


 あれ?


「神父さま、「鉄身」は使えませんか?」


「あれは使えるように見えてそうでもないんですよ」


 神父さまがいたずらっぽく笑いながら、 


「あの魔法は術者自身にしか効果がないんです。なのであの魔法を使うくらいなら攻撃するか「仮睡」を使ったほうが良いですね」


 そうか〜勘違いしてたな。聞いといて良かった……


「話を戻して「仮睡」の魔法ですが相手を眠らせて行動不能にします。これは下層でも十分通用する第1階梯では最重要の魔法なので、最短で詠唱できるように修行してください」


 へえ……下層でも通用するなら率先して修行しなきゃだな。


「あとは「示標」ですね、これは自分の現在地をダンジョン入口を基準にして教えてくれる魔法です。多分今はこの魔法の重要性を理解できないかもしれませんが、そのうち嫌と言うほど分かる日が来ます」


 神父さまが遠い目をして彼方を見ている。


「さて、解説はこんなところですかね……また階梯が上がったら教授しましょう」






◇◆◇◆◇◆



お読みいただきありがとうございます!


今年最後の投稿となります。本年はご贔屓いただきましてありがとうございました!

来年も楽しく読んでいただけるよう精進いたしますのでよろしくお願いします。











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