第36話 これからの方針


 ソニアがあまりの恥ずかしさに逃げだし、マーガレットさんが面白がって追いかけていった。

 

「ホントに趣味悪いですよ?」


「はっはっは、すまんね。しかしマーガレットじゃないがキュンキュンしちゃったよ」


「勘弁してください……」


 アレックスさんをキュンキュンさせてしまったらしい……


「しかし良く私の気配に気付けたね?気配は消してたつもりだったんだがね……現役を離れて腕が落ちたかな」


「なんとなくですよ?なんか視線ですかね?2人分感じたんですよね……このところ偶に有るんですよねこういう事が」


「そうか君は特殊ジョブを持ってたね……たしか以前ガーランドが同じようなことを言っていたな……フッ、まさかね」


 なにかブツブツ言ってるけど後半が聞き取れない、


「そろそろ戻ろうか、1杯付き合わないかい?」


「あーと、実は故郷ではまだ未成年なんです……」


「そうか……なら残念だが無理に勧めるものでもないな……」


 せっかく誘ってもらったのに心苦しいものがあるな。


「すみません」


「気にすることはない、そういうところで故郷との繋がりを意識したりするものさ。カナメもそうだったよ、いくら勧めても頑として飲まなかった。自分は未成年だってね……」


「そうですか……どんな人だったんです?そのカナメさん」


 名前の響きからすると日本人っぽいってのもあって興味が湧いて聞いてみた。


「ん?そうだね……心優しいが芯の強い女だったよ。いい女だった……おっとマーガレットには内緒だよ?」


「あはは、もちろんです」


「多分君と同じ出身なんじゃないかな?同じ黒髪に黒目だったよ。君はニホンのトーキョーって分かるかい?」


「はい、故郷の首都、こっちで言う王都ですかね」


「カナメはそこの出身と言っていた、君も帰ったら探してみたらどうだい?」


 うーん、さすがに名前だけでひと1人を探すのは無理だろなあ……


「ははは、無理だと思いますよ。東京は人多いですからね」


「そうだ、カナメがニホンには1億人も人口があると言っていたがさすがに嘘だよね?」


「いえ、正確には覚えていませんけどそれ位いたと思いますよ?」


 たしかそれくらいだよね?(令和5年11月現在:約1億2,431万人)


「なんと!では走る鉄の箱や空飛ぶ鉄の鳥も嘘じゃなく?」


「自動車と飛行機ですね」


「はぁ……凄いもんだな君たちの故郷は、魔法がないからと馬鹿には出来ないな」


 アレックスさんが感心したようにつぶやいた。これも異世界転移あるあるだよなぁ技術力自慢……


「ダーリン!トーイちゃん!お茶を淹れたから入ってらっしゃい」


 マーガレットさんから声がかかった。


「では入ろうか」


 アレックスさんに促されて室内に入ると、ソニアが部屋の隅っこで真っ赤になって俯いてる。まだ落ち着かないみたいだな……


「ソニア、大丈夫か?」


「あう……プシュー」


 あっ駄目だこれ、もうちょっとそっとしとこう……


「トーイちゃん、こっちいらっしゃい。今はその子放っといてあげて?」


 


 しばらくしてなんとか復活したソニアを交えて、ダンジョンの話を聞いている。


「カレントのダンジョンは確かに初心者向けだが、それでもひよっこ3人でクリア出来るほど甘くはないよ」


「今の俺達で足りないものって経験とか装備、つまり時間以外で何がありますか?」


 先輩に意見を求めるのに躊躇しないっす。知らざるを知らずと為す是知るなりってね!


「そうだね……せめてあと1人、出来れば「魔法使い」を仲間にする事かな?」


「「魔法使い」ですか?」


「今のままだと君が魔法攻撃を担当することになるが、どうしても上級職は魔法の覚えが悪くてね。君が第7階梯の魔法を覚えるのはレベル21だ……」


「レベル3で第1階梯、それからレベル3毎だからそうですね」


「そんなレベルまでカレントのダンジョンに入るのは効率悪いわね……大体カレントのダンジョン平均クリアレベルって13〜15って所だから」


 マーガレットさんが補足解説をしてくれる。


「なるほど、トーイとイヨーナと私で前衛を務めて魔法攻撃の専門家を後ろに1人置くって事ですね」


 ソニアのまとめにアレックスさんが頷いて、


「まあ贅沢を言えばきりがないからね、でも最低限それだけの人員は欲しいかな?」


「今の3人でレベル上げしながら魔法使いを探す感じですかね?」


「そうなるだろうね。まあ腕の良い魔法使いは人気だから気長に探しなさい」



 ギルド職員のマーガレットさんに聞くところによると、カレントで圧倒的に多い職業は「戦士」で5割ほど、その次が「斥候」で2割「魔法使い」と「僧侶」はそれぞれ1割ぐらいで上級職は全部合わせて1割ほどとのこと。

 なので屋外クエスト専門のパーティなどは、戦士3人と斥候のみの脳筋パーティもあるそうだ。


 そう考えるとウチのパーティは結構レア職ばっかり集まったな……




 夜も更けてお暇する時間になった、アレックスさんとマーガレットさんが門扉まで送ってくれる、


「ご馳走様でした、あといろいろ相談に乗っていただいてありがとうございます」


「はっはっは、私も楽しかったよ。久しぶりに現役の子の話を聞けた、また遊びに来なさい歓迎するよ」


「お邪魔しました、メグちゃんまたね〜」


「はいはい、気を付けて帰るのよ!トーイちゃんもまたね?」


「ではおやすみなさい」


 さぁ目標が決まった、明日からも頑張ろう。





◇◆◇◆◇◆


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