第33話 報告


 教会に戻ると地下に降りる階段から上がってきた神父さまと鉢合わせした。


「ソニア、トーイくんおかえりなさい。イヨーナさんは気落ちしてませんでしたか?」


「なんとか……マーガレットさんからも慰められてましたし、諭されてもいましたから。それとイヨーナとは正式にパーティ組むことになりました」


「そうですか次のパーティも決まりましたか……冒険者にとって仲間との死別はいつでも起こりうることです。前向きに立ち直ってほしいものです」


 神父さまもやっぱりイヨーナの事は気にかけていたみたいだ。

 聞いてみると蘇生業務では変に同情した素振りを見せると、そこにつけ込んでくる奴がたまにいる為あえて冷たい対応を取るそうだ。


 まぁケント寺院に喧嘩を売るやつなんて、よほどの馬鹿かアースガルドの常識を知らない落人くらいらしいけど……




 神父さまもひと仕事終わったみたいで、お弟子さんにお茶を淹れてもらってひと息つきながら、


「さてそれではトーイくん、ソニアの適性の見極めはどうでしたか?」


 今日の探索の報告をするよう促してきた、俺達は立ったまま報告する。


「まず不意討ちでモンスターを攻撃させましたが、これは普通に出来てました。その後にモンスターの動きを封じた無抵抗の状態でトドメを刺させましたがこれも出来ましたのでモンスターを殺すということは出来ます」


 神父さまはちょっと安堵したような、でも少し悲しいような複雑な表情をされて、


「そうですか殺れましたか……それでトーイくんから見たソニアの適性はどう感じましたか?」


「才能は極上だと思います、回避に関しては俺では説明できないくらいの天才だと思います」


「ほう……」


 一言発したあと神父さまの姿が目の前から消えて、いつの間にかソニアの側に移動していた。え?


「な……!なんですか神父さま!いきなりびっくりするじゃないですか!」


「なるほど……今のを避けますか……確かに天稟はあるようですね」


 なんかあの一瞬で神父さまがソニアに攻撃して、ソニアが避けたみたいだな。……全然見えなかった。


「いいでしょう……トーイくんの報告と今の動きを見たら少しは安心できます。ダンジョンでの修行を続けることを許可しましょう、精進しなさい」


「いきなり殴りかかっておいて言うことはそれだけですか……そうですか」


 ソニアの苦情も意に介す事なく、椅子に座り直しお茶を美味しそうにひと口すすった。




 今日の分の儲けをパーティ資金を抜いたあと山分けし、神父さまへ今日の宿代として銀貨を2枚渡す。


「ケント寺院では保護した落人には無償で支援するのが教えなのです。ですから本来なら宿代などは頂けませんが、昨日の話の通りトーイくんの金銭感覚を養うための支援の一環として、トーイくんからの喜捨という形で受け取らせてもらいます」


 ということだった……まぁ建前って大事だよね。





 このあとマーガレットさんたちと食事に行くことを告げ、迎えが来るまで自室に戻る。

 独りになって自然とこれからの事を考える。

 

「今の持ち金が銀貨8枚に銅貨17枚。ざっと金貨1枚か……命懸けで2日戦って1万足らず……ヘコむな」


 「魔法剣士」基礎コース受講の借金がソニアにあるから、それも早急に返さないといけない。

 仲間との間での金の貸し借りはご法度だ。発言力に上下関係が出来てしまうかもしれない。そのせいで死んでしまったら目も当てられない……


「鎧も更新したいし、流れとしては分割で返済しながら武具の更新費用の積み立てかな。この歳でローン持ちって……」


 明日からイヨーナが加入して1人増えるしその分稼ぎも減る、まぁその代わり戦闘が安定するだろうから危険も減る、安全とお金のトレードオフだな。


 基本戦術は今まで通り、誰かが囮になって引き付け1匹ずつ行動不能にして、最後にトドメを刺して回る戦法で良いと思う。

 少なくても第1層はこの3人で賄えるだろう。今のところはこんなもんかな……あまり先のことを考えてもどうにもならないし?


「トーイ〜、メグちゃんたち来ましたよ〜」


 さぁ晩飯行こーか。



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