第27話 ソニア心の試練
教会に戻ってみると、ソニアは既に帰ってきていた。
「お帰りなさいトーイ、閉門に間に合って良かったです。それでマスターとはなに話したんですか?」
「閉門時間ギリギリだったけどな……マスターにとって俺は直弟子なので死ぬなってさ」
「へー、マスター直々にそんなこと言うって、よほど目をかけてるんですね」
そんなもんかね?
「ほぅ、彼がそんなことを言っていましたか……彼も少しは落ち着いたのですかねぇ」
後ろから神父さまの声が聞こえてきた、なんか気配みたいなものを感じたのでそんなに驚きはない。
「あれ?神父さまお知り合いでしたか?」
「以前にね、彼とはパーティを組んでいたことがあります」
「え?神父さま冒険者をやっていたんですか?」
「若い頃に修行の一環で5年ほどね。パーティの方針であちこちのダンジョンを回ったものです。ここのダンジョンも踏破しましたよ?彼もパーティ結成当時からのメンバーです、若い時はやんちゃでねリーダーや私は苦労させられたものですが……」
なるほどあの詠唱の早さとアドバイスも、実戦の経験に裏打ちされたものだったのか……
しかし、マスターも昔はやんちゃだったのか……今のキザな印象からは想像もできないな。てか神父さまの若い頃に一緒のパーティって、あの人いったい幾つだ?
「ソニア、初めてのダンジョンはどうでしたか?」
「マーガレットとかにいろいろ聞いてたんですけど、やっぱり聞いた情報と実際に行くのとでは全然違いました。何て言うんですかね?殺気に満ちてると言いますか……」
情報収集はしっかりしてくれてたんだ……気にしてなかったなぁ。現代日本人なら分かるだろ、情報は大事!ソニア任せにはしないで俺も情報収集しないとな。
「あなた自身は戦闘しましたか?」
「オーク2体のグループとゴブリン1体との2回戦闘があったのですが、トーイが両方とも仕留めてくれまして私は治療だけでした……」
「あなたに戦闘が出来ますか?モンスターを殺せますか?あなた達は2人のパーティです、立ち回り次第ではあなたも前に出なければいけませんよ?」
結構きつい事言ってるなぁ、でも大事なことだよな。マスターも殺れなくて逆に殺られちゃう事があるって言ってたし。
「出来ますよ!任せてください!」
「明日実際に前に出てモンスターと相対しなさい。そこで殺れないようなら、今後ダンジョンへの出入りは禁止します。トーイくん見極めとフォローをお願いしても良いですか?本当なら私が行きたいところですが、今は教会を空けるわけにはいきませんので……」
そうなんだ……そっか蘇生業務ってのがあったんだっけ?院長さまが今居ないから神父さまが1人でやってるんだったよな。
「分かりました任せてください。しっかりと見極めますね!」
責任重大だな。あまく見積ったりしたら死ぬのはソニアだから厳しく見極めないと……
「頼みました」
「そんなに厳しくしなくても……」
なに言ってんだ?って、神父さまも同じことを思ったようで、
「あなたは何を言ってるんですか?これは心の適性をはかる試練だと思いなさい。この試練をパス出来ないのに冒険者を続けると、あなたは遠からず死ぬことになります」
「マスターも言ってたからなぁ。殺れなくて逆に殺られちゃう事があるって……あと、今日感じたことだけどオーク先輩もゴブリンくんも生き残るために俺を殺す気で戦ってた……殺らなきゃ殺られるぞ?」
「先輩?くん?……まあトーイくんの言葉は実戦を経験した者の説得力がありますが、さっきのあなたの言葉にはそれがなかった……直接戦闘をしていなかったとしても、それでも実戦に参加したにしては言葉が軽かった」
二人がかりの言葉責めにソニアが涙目になっている。そして話を逸らすためか、
「そうだ!戦利品を分けなきゃですよ!1層にしては実入りが良かったんですよ?」
「おお!マジ?マスターが言うには1層だと実入り少ないって聞いたけど……」
ソニアは話を逸らせたのが嬉しいのかニコニコしながら硬貨を10枚ほど出して、
「銀貨5枚に銅貨6枚ですよ〜ゴブリンが持ってた短剣が銀貨2枚になりました〜ラッキーですね!」
「なら、山分けするなら銀貨2枚に銅貨3枚で分けて、残りの銀貨1枚はパーティ資金として貯金しとかないか?」
「計算はやっ、ちょっと待ってくださいね?えーと銅貨を半分に分けて……合ってる」
「当たり前じゃん?ただの割り算だよ」
「そっか学生って言ってたもんね……カッコいい」
あ〜これは異世界あるあるネタだねぇ、四則演算できるだけでインテリ扱い。
「よく考えたらお金の価値がよくわからないな……」
「ああ、そうでしょうね、では簡単に説明しましょう」
神父さまが説明してくれるらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます