第25話 命のやり取りというもの
向こうも俺を殺す気なんだ……
初めての戦闘をこなして分かったことである。オーク先輩の攻撃1つ1つに殺意が込められていた……
多分練習ならオーク先輩2匹の攻撃も軽く捌けていたと思う、3日間という短期間だけどそれだけの練習をこなしたから……桃太郎はしばらく結構です。
しかし、いざ実戦となると相手も死にたくないから本気で俺を殺しに来る。その殺意のプレッシャーはとんでもなくて、マスターに習ったことが半分も出せなかった。
つまりマスターに習ったことが全く身についてなかったということだ……
覚えた技術を実戦で使えて初めて技術が身に付いたと言えるのではないか?
マニュアルを見て操作方法を覚えたからって、拳銃をいきなり撃って的に当てられるものでもないのと同じ事だと思う。ちょっと違うか?
まあとにかく向こうも殺りに来てるから、こっちも殺らなきゃ殺られるよねって話だな。
「いや〜トーイカッコよかったですよ!」
「そんな事ないよ!目茶苦茶だったじゃん!」
「いえいえ、こう!振り向きざまにズバッと斬りつけたのなんかカッコよくて惚れ直しましたよ!」
初の実戦で気分が高揚して、テンションが変になってる……2人でキャイキャイ言いながら通路を歩いていると、突き当たりまで到着してしまった。左手には扉が有り、その先がどうなっているのか伺いしれない。
「突き当りに着いたな、引き返して帰ろうか?」
「そうですね、引き返してる最中にまたモンスターに会うかもですし」
本音を言えば今日はもう戦いたくない……命のやり取りは凄いストレスになってる。
でも早急に自立しないといつまでも教会のお世話になるわけにもいかないし。
来た道を戻って行き、オーク先輩との死闘のあとを越えたあたりで前方に動く影を見つける。
「言ってるそばから1匹発見!あれは……ゴブリンくんだな。ボッチか……」
「いつも思うんですけど、なんでゴブリンをくん付けするんですか?」
「気付いてないみたいだから不意討ちしてみるか」
「やっぱり質問はスルーなんですね……」
ソニアがなんか言ってるがそんな事より、ゴブリンくんがこっちに気付いていないこのチャンスを活かさなきゃ!
剣を抜いて息を止め後ろからゆっくりと近付いていく。気付くなよ?気付くなよ〜?よし間合いに入った!ひと息に突っ込んで背中から刺し貫く。上手く急所に入ったみたいで、ゴブリンくんが少しジタバタしたがすぐに動かなくなった。
「ふぅ~上手くいったみたいだな……ソニアやったよ!」
ソニアの方に振り返ろうとした時、何かが俺に襲いかかるような気がしたのでその場から飛び退る。
「ちぃぃ!くっ!」
さっき倒したはずのゴブリンくんが、持っていた短剣を今まで俺がいた場所に突き出す、その剣が俺の腕をかすめた。ゴブリンくんはそのままべシャリと倒れて、どうやら今度こそこと切れたようだ……
「トーイ!大丈夫ですか!」
「大丈夫、かすめただけだよ……」
「動かないでください!─────────封傷」
おお、少し詠唱が早くなってる。さっきはそれどころじゃないほど動揺してたから気付かなかった……
「ありがとう。あれだね、ちゃんとトドメを刺しとかないといけないね」
「そうですね、それは反省点ですね……」
ソニアがゴブリンくんの遺体をゴソゴソ漁っている。さっきのオーク先輩のときもやってたけど何してんだろ?
「ああ、これですか?ゴブリンの持ち物を漁ってます……結構お金持ってました!」
「そんな事するんだ……」
「貴重な収入源ですよ?部屋に居るモンスターとかを倒したら、宝箱があるなんて良くあることだってメグちゃんが言ってました!そのために斥候が居るんだとも言ってましたし。それに戦闘では私は今のところ役立たずですからね、これくらいのことはしないと!」
「なるほどね〜。あと、ありがとう全然気にしてなかった。そうだよね仕事でやってるんだから収入がないとね」
「いえいえ気にしないでください、そのために私が居るんですから!……あとはこの短剣は売れそうですね。「司祭」が居れば鑑定が出来るんですけどね。まあ短剣だから私達は使わないです。ふっかける商会も未鑑定だから買い取らないなんて、アコギなことはさすがにやりませんから売っちゃいましょう!」
「オス、ソニアさん」
その後はモンスターにも出会わず入口の扉まで戻ることが出来た。念の為警戒しながら扉を開けて地上に出ると、意外な人が出迎えてくれた。
「初陣お疲れさま、どうだった実戦は?」
「マスター?どうしてここに?」
「3日間とはいえ戦闘のイロハから教えた直弟子の初陣だ、気になるのでここの兵士に君がダンジョンに入ったら報告するように手配してたんだ。それでどうだった実戦の感触は?」
「教えてもらった事の半分も出せませんでした……」
「うむ、そうか。よかったら道場に来給え」
でも、ソニアも居るし……
「後処理はやっとくから行っといで?」
「そう、ごめんな?ではマスター伺います」
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