第24話 初陣


 ギルド登録を終えて東門の方へ向かっている。


「やっとダンジョンに入れるな!」


「トーイがウキウキですねぇ」


 そりゃあねぇ、このために痛いの我慢して基礎コース受けたんだから!


「今日は様子見で1〜2回ほど戦ったら帰ろうか」


「そうですね、本格的には明日から始めましょう」


 東門を抜けそこから少し南に下ると、お馴染みの職業訓練所が見えてくるが今日の目的地はそこではない。

 職業訓練所の敷地を1区画と考えた時、中央やや東側に有る兵士が四角に立っている建物が今回の目的地。


 建物の中に入ると中央奥に地下に降りる階段が有りここにも兵士が2名立っている。マスターに聞いた話が間違いでなければ、この階段がダンジョンへの入口になっているはず。左手にはダンジョンからの戦利品を鑑定・買い取り・販売する通称ふっかける商会こと「フッカケン商会」の出張所。右手はダンジョンから出てきたモンスターを駆除する兵士の詰所が有るらしい。


「初期装備の鎧ということは君が噂のルーキーだね。これからダンジョンに入るのかい?」


 初期装備で個人が特定されてしまう……早く装備を更新しよう……


「はい、入って大丈夫ですか?」


「ああ、ギルド章は持ってるね?……はい確認したから入っていいよ。初陣だよね無理しないようにね?」


「ありがとうございます」




 階段を降りて行くと突き当りに扉がある、扉を開けて首だけ出し左右の確認。前方と右に通路が続いている。その通路も洞窟というよりホントに地下通路という感じで、人の手が入っているのが分かる造りになっている。周囲は薄暗く、先の方は闇に閉ざされている。


「結構暗いな……」


「ランタンを用意した方がいいですね」


「そうだね、明かりは必要だな」


 これは次にダンジョンに入る時の課題だな、


「今回はこれを使おう」


 スマホのライト機能を使ってみる。おお!かなり明るい、これは使えるか?でもバッテリーが保つかな~


「凄い明るいですね、というか明るすぎて目立ちますね?」


 あまり目立ちすぎてもいけないか……難しいな。


「とりあえず突き当たりまで行ってみる?」


「そうですね、前にメグちゃんに聞いたんですけど、ルーキーはしばらくダンジョン内の扉は開けずに、モンスターとの遭遇戦で戦闘に慣れるもんだって言ってたんです」


 そうか扉の向こうに敵がいて待ち伏せされている可能性もあるのか……


「そういうことなら通路を行ってみよう。右・正面どっちに行く?」


「うーん……なんとなく右!」


 まあ、こんなのに正解とかないよな。


「オッケー、じゃあ右に行くか!」




 ダンジョンに入って右の通路を進む、脇道もない一本道なので前方と後ろだけに注意してゆっくり進む。ん?


「ソニア!前方に二体なんかブタみたいな顔のが居るんだが?モンスターでいいのか?」


「はい!多分あれはオークですね!」


 おお!あれがファンタジー第4の有名人オーク先輩か!

 初戦闘だな、武者震いしてきた。てかほんとに震えが止まんない……うわっオーク先輩もこっちに気付いてよだれをまき散らしながら突進してきた!そして手に持っている棒を振り下ろしてくる。マスターの打ち込みに比べたら全然なんてこともない振り下ろしなのに、怖くて転げながら躱してしまう。


「うわっ!あぶねぇ!」


 すぐに立ち上がり、ここでやっと剣を鞘から引き抜くことができた。

 もう一匹のオーク先輩は?こっちに来てる!錆びた剣を横なぎに振り抜く、それを斜め後ろに飛び退き躱す。


「いつっ!」


 剣が頬を掠めて切り傷を作る。


「ドクンドクンドクン」


 心臓が早鐘を打つ。


 こいつら俺を殺す気だ!ごく当たり前に殺しに来てる!殺らなきゃ殺られる!


「トーイ!」


 ソニアの叫び声に無意識に反応して、後ろに振り向きながら「駆け出しの剣」を横に降り抜く。手に確かな手ごたえを感じる、目を向けてみると棒を振り上げたオーク先輩の首に剣がめり込んでいた。殺した?怖くなって剣を引き抜くと斬れた首筋から赤黒い血が噴き出す。

 もう一匹のオーク先輩が仲間の血を見て興奮したのか、奇声を上げながら突進してきた。


「ブォグワーーーッ!」


 左後ろにはソニアがいる、ここで大きく避けちゃうとオーク先輩がソニアの方に行っちまう。怖いけど迎え撃つしかない!


「わーーーーーー!!」


 「ギャキン!」オーク先輩が錆びた剣を振り下ろし、それを「駆け出しの剣」をかち上げる事で迎え撃つ。しかし、体重とスピードが乗った振り下ろしを止められるわけもなく、勢いが落ちたもののそのまま振り下ろされる。

だが、勢いが落ちた瞬間「駆け出しの剣」を斜めにズラして錆びた剣の軌道を変えることに成功した。大きく体勢を崩すオーク先輩、俺は後ろに回り込んで「駆け出しの剣」を大きく振りかぶると、


「うわーーー!死ね!死ね!死ねー!!」


 体重を乗せて振り下ろした!


「ブギャ!グワッ!ブグヮ……」


 振り下ろした!振り下ろした!振り下ろした!何度も「駆け出しの剣」を振り下ろしていると、


「トーイ、もう死んでます!終わりましたよ!」


 ソニアがオーク先輩が絶命したことを教えてくれた、


「ハァハァハァ……」


「トーイ凄いですね!初めてで2匹も倒しちゃった!でも痛そうですねすぐに治しますね」


 ソニアが傷を治しながら褒めちぎってくれるが頭に入って来ない……

 今だに心臓がバクバク言ってる。


「なんとか……生きてる……」



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