第18話 「魔法剣士」基礎コース 3日目


 明けて翌日、まだ誤解したままの神父さまからの生暖かい視線を受けながら朝食をとり、ソニアのほくそ笑んだ顔を尻目にそそくさと職業訓練所に向かった。


「今日が最終日だがやることは昨日の続きだね。さあ桃太郎くんがその後どうなったか聞かせてくれ給え」


 桃太郎がそんなに気に入ったのか?でもさすがに続きが聞きたいからと、手は抜いてくれないので普通に捌くのが大変だ。

 そのうえ捌きながら物語を紡ぎ出す集中力と、喋りながらの運動で急速なスタミナの減少がハンパない。


「うむ、素晴らしい物語だった!」


「ぜぇぜぇ……そっすか……」


「そして、これで「魔法剣士」基礎コース修了だ。おめでとう」


 おぉ!もう桃太郎を語らなくていいのか!良かった……あと、まだ半日有るんだけど、どうするんだろ?


「君は落人だから知らないだろう掟を教えておこう」


「掟ですか?」


「そうだ、スペルユーザー全員に定められた掟だ。いいかい?戦争時以外、屋外で人に向けて攻撃魔法を使用することは禁止されている。これはアースガルド三国で明文化された法律でもある」


「アースガルド三国?」


「そうか当然知らないか……まず、ここ「エギンス王国」、そしてエギンス王国の兄弟国である「ロビロア王国」、最後にアースガルド最大の強国「ゾリディア帝国」、この3国を総称してアースガルド三国と言う。あとは小さい都市国家がいくつか有るくらいだね」


「なるほど、ありがとうございます……それで人に向けての攻撃魔法の使用禁止は分かるんですけど、何故屋外と付いているのかが良く分からないです」


 疑問に思った事をマスターに聞いてみた。

 戦争時はバンバン使いまくるんだろうなと分かるから、最初の「戦争時以外」ってのは理解できた。

 人に向けてというのも、ワイバーンさんやゴブリンくんがいる世界だから、モンスター相手には攻撃魔法を使いたいってことで理解できる。

 あと攻撃魔法に限定したのも回復魔法とかがあるから、魔法全部を禁止できなかったってことで分かる。

 ただ、質問通り何故わざわざ屋外と限定したのか分からない。


「そうだね……やはり言って聞かせるより見せたほうがインパクトあるか……見てなさい──小炎」


 おお!!初の魔術師系呪文!こぶし大の大きさの炎が直進して壁に激突して消えた!


「この屋内やダンジョン内など特殊な場所では、結界の力で攻撃魔法の力が5分の1に抑えられる。つまり屋外だと今の小炎の5倍の威力が出るということだ」


「はぁ?5倍ですか?マジで?」


「知らなければそういうリアクションになるよね?許可を取ってるから今から屋外で1発だけ見せてあげるよ……」


 マスターに連れられて屋外にある周囲が岩だらけの場所に来た。


「ここなら危険がないから安心出来る。さっきと見比べてご覧なさい──小炎」


「わっ!でかっ!!」


 屋内で見たものとは比べ物にならない程の大きさの火球が岩の壁にぶつかって爆ぜた。


「攻撃魔法最弱の小炎でもこの威力だ、これ以上の攻撃魔法なんていくつもある。そんなもの屋外で使ったらどうなるか分かるよね?」


「ゴクリ……」


 想像したら恐怖でツバを飲み込んでしまった……


「うん、これを恐怖してくれたなら教えた甲斐があったよ。まあみんなも自分に撃たれたら怖いからこの法律は良く守られている。ちなみに許可なく使ったら死刑だから気を付けてね?」


「え!?死刑っすか?」


「そう死刑、王族でも死刑になった方が居るから結構厳格だよ?」


 気を付けよう……




 道場に戻り座るよう促される。座って待っているとマスターが剣と革製の鎧を持って対面に座る。


「これは基礎コースを修了した人全員に渡すことになっている剣と鎧だよ。まあ転職組は自分の武器防具を使うから要らないって断わられるんだけどね。君には必要だろう?」


「ありがたいです!武器防具のこと全く考えてませんでした!」


「まあ強化もされていない最低限のものだから、早く更新するべきだけどね。武器防具は前衛の生命線だから優先して強化・更新する事。いいね?」


「はい!」


「ではこれで「魔法剣士」基礎コース 終了だ。死ぬなよ?」


「ありがとうございました!」








◇◆◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


今話である程度の説明は終わりました。多分……

説明回ばっかりですみませんでした!



次回も読んでいただけると嬉しいです。

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