第14話 職業選択の自由
やっと順番が回ってきた。長かった……
横入りしようとしたゴロつきが兵士にどつき回されたり、物乞いが集ってきてはソニアの顔を見て逃げ出したりと結構飽きなかったけどそれでも長かった。
「次の者入れ」
部屋から入ってくるように促す声が聞こえてきたので、少し緊張しながらも入室する。
中には入口から中央のテーブルを挟んだ反対側にローブを着たおじいさんと、おじいさんを挟むように兵士が2人。テーブルの上には紫色の小さなクッションに水晶玉を乗せて置いてある。
「若いな……緊張しなくてもいい。ちとチクッとするだけじゃ、そこの針で指を刺して血を1滴水晶に付けろ。終わったら水薬を渡すからチャッチャとやってしまえ」
痛いの嫌なんだけど……あとがつかえているのは今まで並んでいたのでよく知ってる。ホントにチャッチャと終わらせよう。血を水晶に付けたらスゥッと染み込むように消えていった。
「よし十分だ、ちと待てよ……ほう優秀だな4職適性がある」
おじいさんが感嘆の声を上げ、兵士2人もビックリしているようだ。
「すごいですねトーイ!基本職全部ってなかなか無いですよ!」
今まで黙って見守っていたソニアも嬉しそうにニコニコしている。
「ん?嬢ちゃんなに言ってる?基本4職ではないぞ」
「はい?ならなんの職業です?」
「ウムそれは今から説明するから、嬢ちゃんはちと黙っておれ」
あっソニアがちょっとヘコんだ。
「よし小僧、では説明するぞ?よく聞いてよく考えて選べよ?」
「はーいお願いします」
「小僧に適性がある職業は、「戦士」武器を使った戦闘を行う、パーティの最前線を担う職業だな。「斥候」宝箱のカギ開けやダンジョンのギミック解除とパーティには欠かせない職業だ、前衛に立つことも多いが戦闘はそれほど得意ではない。「魔法使い」戦闘時に魔法を使って敵を攻撃するパーティの最大火力を担う職業で、補助魔法を使ってパーティの補助を行ったりもする。ここまでがお前さんに適性がある基本職だ」
おお!魔法使いあった!って適性が有るのが4職で今の説明では3職までだったから、残り1職は上級職か!すげぇじゃん、いきなり上級職って燃えるもんがある!
「ということはもう1職は……」
ソニアが驚愕の表情を見せている、それほどのことなん?
「ウム、上級職「魔法剣士」戦士のように武器を使った攻撃と魔法使いのように魔法を使った攻撃が両方出来る攻撃特化の職業だな。ただ、盾を装備出来ないので防御面が甘くなりがちなのが難点だ」
「じゃあ魔法使いで」
「決断早いな!聞いておったか?魔法剣士にもなれるんじゃぞ?」
「痛いの嫌なので魔法使いでお願いします」
「分かったわい……下に行けば全体攻撃がバンバカ飛び交うから結局痛いのじゃがな……」
「え?結局痛いの?それなら魔法剣士でオナシャス!いきなり上級職ってなんかカッコいいよね!」
「現金なやつだな……魔法剣士でいいんじゃな?」
頷くとなんかおじいさんが頭痛そうにしてる。
「頭痛ですか?お大事にしてくださいね」
「お前さんのせいなんだがな……では────ホイこれでお前さんは今から魔法剣士だ。精進しろよ。あとなんか特殊ジョブがあるみたいじゃな」
特殊ジョブ?なんかさっきソニアも言ってたな、気にしなくていいとかなんとか。ソニアの方を見やるとまた驚いた顔を見せて、
「特殊ジョブですか!?なんですか、ソードマスターですか?」
勢い込んでおじいさんに詰め寄る。
「いや〜スマンの〜、ここでは分からんわい……王都か城塞都市にでも行って調べてもらってくれ」
「そうですか……残念ですね」
「ウムしかしいきなり上級職に特殊ジョブとは逸材じゃな……小僧、1つ年寄りのアドバイスじゃ。戦闘時にヤバいと感じたらすぐ撤退すること、これは冒険者の鉄則じゃぞ。才能があるやつは自分に自信が有り過ぎるからその鉄則を疎かにしやすい……自分なら大丈夫だとな。しかし才能が有ろうがなんだろうが小僧はいち冒険者でしかないのじゃ、努々それを忘れるなよ?冒険者は生き残ってなんぼじゃぞ」
ふむ、大事なことのような気がする……
「はい!ありがとうございます!肝に銘じます」
「ウム素直だな、そういうやつは伸びる。頑張れ」
「はい、ありがとうございました」
入ってきたものとは別の扉から外に出る。
「優しい良いおじいちゃんだったね?」
「あのマスターがあそこまで饒舌なのは珍しいですよ。それだけトーイが逸材だってことですね!」
「マスター?」
「はい、あの方は「司祭」のマスターをされてる方ですね」
へー確かにそういう人って気難しいイメージあるもんな。
「じゃあ「魔法剣士」のマスターも居るの?」
「はい、いらっしゃいますよ。今から行きますけどね」
えっ?行くの?
「行くの?って顔してますね……行っといたほうが良いですよ?戦闘の立ち回りとか普通の戦士とも違うでしょうし、そういうのを聞いていたほうが生き残りやすいでしょ?」
「なるほど、魔法がらみの事も聞きたいし行ってみるか……」
ギルドはその後だな。
◇◆◇◆◇◆
お読みいただきありがとうございます。
17歳にして働くことになりました……勤労学生です。
いきなり上級職とか、異世界転移ものではよくありますよね?
あと僧侶の適正が無いのは日本人だなぁって感じですね(笑)
説明回っぽいのが続きますが、もうちょっとお付き合いください。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます