第13話 「いただきます」っていい言葉だよね?


『お兄ちゃん、ソニアさんって誰?』


 おぅ……なんかメッセなのに文字から粘度を感じる。舞の悪いクセだ、お兄ちゃんっ子なのは嬉しいが、俺に近付く女の子を全て敵認定するのはやめてほしい。去年隣の席で仲の良かった小杉さんは未だに目を合わせてくれない……


『こっちで知り合った子だよ。教会のシスターで行くあてのない俺を気にしてくれてるんだ』


『くっ!お兄ちゃんに悪い虫が付くのに手が出せないなんて!』


 よほど悔しいのかメッセなのに『くっ!』って言ってるし……あと妹よ、手が出せたらどうする気だったんだ?

 それからも取り留めない話を少ししたあと、定期的に連絡を取る約束をしてメッセージを終えた。


「原因が分からなくて不気味ではあるけど、舞とやりとり出来るのは心配が減って助かる」


 かける心配も減るし、いい事ずくめなのだからご都合主義バンザイということでここはひとつ。

 日が昇ったら職業訓練所とギルドとダンジョンに行くつもりだからもうひと眠りしとこう。




 扉をノックする音で目が覚める……

 窓の外を見てみるともう日が昇っている、ちょっと予定より寝坊しちゃったか。


「トーイ〜起きてますか〜入っちゃいますよ〜」


「はーい、今起きたから、入っていいよ」


「おはようございますトーイ!よく眠れましたか?」


 ソニアが室内に入ってくると朝の挨拶をしてくる。今日は髪型をサイドポニーにしてワンピースとベストを着ている。ファンタジーアニメの街娘って感じ(説明放棄)の装い。元が良いからそれでも可愛い。言わないけどね!


「おはようソニア、おかげさまでゆっくり眠れたよ」


 あっちとメッセで繋がることは言わないでおこうと舞と話してたので内緒。


「それは良かったです。さて、片付かないので朝ご飯食べてしまいましょう」


「そうだな、待たせた?ごめんな……」


「いえいえ、疲れてたんでしょ?無理もないですよ。でも次からは時間厳守ですよ!」


「りょーかい、ありがとう」


 テーブルには神父さまも居て待っててくれたみたい……うわぁ悪い事しちゃった。


「お待たせしてすみません」


「よく眠れましたか?」


「ありがとうございます。おかげさまでぐっすりでした」


「それは良かった、では食べましょうか」


「「いただきます!」」


「なんですか、それは?」


 ソニアが神父さまに説明する。


「なるほど、それは素晴らしい考えですね。ふむ、いただきますですか……素晴らしい……いいでしょう当教会も今後は食事の際は、その言葉を挨拶として取り入れましょう」


 え?いいの?えらくフットワーク軽いけど……食前の祈りとか決まりは無いのかな?


「では改めて「「いただきます」」」


 朝食はパンとチーズとスープでした。昨日の夕食食べてないから腹ペコだったのも相まって美味しかったです。


「トーイはホントに美味しそうに食べますね!」


「食事を美味しく食べる……良いことです」


「美味しいものは美味しくいただく、でないと作ってくれた人に失礼だろがい!」


「なんでキレてるんですか?」


 キレてないよ?俺をキレさせたら大したもんだよ?


「「「ご馳走様でした」」」


 ウム美味しゅうございました……


「ソニア、さっそくだけど職業訓練所に行きたいんだけど案内してもらっても良いかな?」


「良いですよ〜ちょっと楽しみですね、トーイがどの職業に就けるか」


「そんなに可能性があるのですか?」


「はい、私が見たところ「戦士」と「斥候」にはなれると思います」


「ほう2職もですか、それは素晴らしい」


 戦士は昨日の話にも出たし字面的にもどんなのか分かるけど、


「斥候?」


「はい、昔は「盗賊」と呼ばれてまして、宝箱のカギ開けやダンジョンのギミック解除の専門家です。呼び名があまりよろしくなくて評判が悪く今の名前に変わったんですけどね」


「ほうほう、「戦士」と「斥候」ね。基本職は4職業って言ってたからあとは「僧侶」と「魔法使い」かな?」


「そうですね、よく覚えてましたね。あとは上級職と呼ばれる「魔法剣士」「神官騎士」「司祭」「暗殺者」ですね。特殊ジョブというのもありますけど考えなくていいです。そしてカレントの街では「魔法剣士」と「司祭」になれます」


 「盗賊」は改名して「暗殺者」はそのままなのか?


 ソニアのシスターってのは多分僧侶ってことだろうから目指すは魔法使い一択。痛いの嫌だから……


「職業訓練所のあとはギルドですね?なら登録したら1度帰ってきなさい」


「はい、神父さま」


「行ってきます」




 職業訓練所はダンジョン入口を取り囲むように、南門と東門の中間地点に有るためちょっと歩く必要がある。

 しかも適性検査所は大概行列が出来るそうなので、起きるのが遅くて出遅れた俺達は結構待たなければならないようだ。

 実際に職業訓練所の近くに着くと結構な行列が出来ていた。あららこれは……このあとギルドに行くことを考えたら、今日はまだダンジョンに入れないかもな。俺のせいだし、しかたない大人しく列に並ぼう。


でも長いな〜







◇◆◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


ちょっとした説明回ですね。どっかで聞いたことのある云々は10話のあとがきの通りです!気のせいです!


次回も読んでいただけると嬉しいです。

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