第11話 酔

「お酒とやらを飲んでみよう!」

「おい。子供だろ。」

「ノンアルコールだから心配御無用! あの不愉快な匂いもしないよ!」

「それはソフトドリンクと何が違うんだ。」

「酩酊感は味わえる様になってるのさ。」

「ふうん。じゃあお前が試せよ。」

「……ボクが酔ったからって、変な事しないでよ?」

「する訳無いだろ。逆にされそうだ。」


「フハハハうわぁーん!」

「笑いながら泣くなんて、器用な奴。」

「何がおかしいんだよぉ〜ハハハハッ!」

「お前の頭がおかしくなってるのは解る。」

「おかしい? ボクが? おかしいのは世界の方だ! こんな酷い事ってある!?」

「ああ、うん。おかしいよな。おかしいおかしい。」

「ちゃ、ん、と、聞、い、て、よぉー!」

「聞いてる聞いてる。」


「やっぱりお前もストレス溜まってるんだな。」

「……ごめん。お酒は悪い文化だ。」

「別に良い。少しはお前の気が晴れるなら、お酒も悪い物じゃあない。」

「あれは誤魔化しに過ぎないよ。一時的にフィルターを掛けるだけの物だ。」

「酔いが覚めてからの方が辛いか。」

「当然。この世界と同じだね。」

「ああ。次はオレの番だな。」

「やめておきなよ。後悔するから。」

「後悔だって共有すればマシになるだろ。」


「イチゴ。」

「うん?」

「こっち来て。」

「うわぁ、酔ってる。当たり前だけど。」

「酔ってない。」

「酔っ払いの台詞だ。」

「良いからこっち来て。」

「……え? 座るの? 君の膝に? 本気で?」

「早く。」

「あ、はい。失礼しますよ。」

「違う。こっち向いて。」

「それは流石にすごく恥ずかしいんだけど。分かった、分かったから! お腹揉まないで!」

「えへへ。」

「何だか調子狂うなぁ。」

「イチゴ……。」

「その、見つめながら名前呼ぶの、やめよ?」

「変な事、する?」


「ヤバ過ぎる。あれが色気という物か。」

「……確かに後悔したぞ。」

「後悔というか、崩壊というか。キャラクターがね。」

「もう二度と飲まない。」

「確かにお酒は人の理性を飛ばすみたいだからね。」

「ああ。お前なんて同じ事ばかり繰り返してたな。ああいうのは確か、管を巻くって言うんだったか。」

「美少女にあるまじき醜態だったよ。それに比べたら君なんて可愛いくらいじゃあないか。」

「うっさい。あれはオレじゃあない。」

「酔いが覚めてから現実逃避するのかい?」

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