第9話 冬

「漫画やアニメで主人公が覚醒するのってあるでしょ?」

「ああ。髪が逆立ったり謎のオーラが出るアレだろ。」

「暖かそうだよね。」

「通り越して熱いだろ。」

「言われてみれば確かに。ちょっと覚醒してみようと思ったけどやめておくよ。」

「覚醒の理由が軽過ぎる。お前は主人公にはなれないな。」

「ボクはヒロインだからね!」

「ヒロインが主人公を暖房器具扱いするな。」


「寒いねぇ〜。」

「お前、冬だから寒いって言っておけば良いと思ってるだろ。」

「冬ってそういう物でしょ。ボク達は適温しか知らないけどさ。」

「駄洒落を聞くと寒くなるらしいぞ。」

「サブいギャグなんかで涼みたくな〜い!」

「それは夏だ。なんでお前は出て来る曲が古いんだよ。」

「最先端を生きているからね。過去は全て等しく古い物なのさ。」


「教室に炬燵があるのはおかしくないか?」

「炬燵は冬の風物詩。学校は勉学だけでなく、四季折々の物を学ぶ事だってある。」

「これも勉強の一つだと。」

「そうそう。昔の人はこうして暖を取りながらダラダラとしていたそうだよ。」

「勤勉な国民性だったはずだ。」

「きっと人目を気にする国民性だったんだよ。」

「格好付けていた訳か。お前と同じだな。」

「ボクは自然体だよ。何をしても美少女だからね。」


「学校が燃えてるよ。」

「燃やしたんだろ。」

「下は大火事、上は洪水、なーんだ?」

「何だ、急に。」

「火を付けたら暖かそうだと思ったんだ。」

「焚き火感覚で放火するなよ。」

「でも熱そうだからやっぱり消す事にした。」

「空を降らすな。規模が神のそれなんだよ。」


「苺狩りをしよう!」

「はあ。なんでまた。」

「冬は苺の季節だよ。うん、つまりボクの季節でもあるね。」

「分かった。狩ってやるから精々逃げ惑え。」

「ひえっ。違うよ、果物の苺!」

「冗談だ。」

「ちょっ、当たらなくても怖い! 大鎌はブンブン振るう物じゃあないって!」

「肝が冷えるだろ。寒さは感じたか?」

「ホラーは夏だよ。」

「はっ。だったら現実は常夏だな。全く薄ら寒い。」

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