第6話 働

「アルバイトを始めようと思うんだ。」

「……ふうん。何の?」

「とりあえずコンビニにしておこうかな。」

「二十四時間働くのか。」

「知ってる? 人は休み無しで働くと死んじゃうらしいよ。」

「そうなのか? 昔の人は随分柔だったんだな。」

「君って天然な所あるよね。」

「何だよ、それ。」


「いきなり仕事だと緊張するから、ちょっと練習に付き合ってよ。」

「オレは働きたくない。」

「大丈夫。ボクが店員やるから、君はお客さんね。」

「何処かで見た流れだな。」

「良いから、ほら。お店入る所から頼むよ。」

「……あっ、こんな所にコンビニがある。なんかワクワクしてきたな。ちょっと入ってみるか。」

「イラシャイマセー! イイモノアルヨ!」

「本当にコンビニか? 外人の露天商じゃないか。絶対ぼったくりだろ。」

「コノ水ウマイヨ! オヒトツ百円!」

「普通だ。普通のコンビニ価格だ。」

「オ客サン、ボクウリモノチガウヨ!」

「なんでお前を買おうとしてる事になってるんだよ。」


「う〜ん、ちょっと違ったかな。」

「最初の時点で違うだろ。お前が働くのに、なんでステレオタイプの外人が出て来るんだよ。」

「緊張して上手く喋れなかったんだよ。大丈夫、次は上手くやるから。」

「また入る所からやるのか?」

「コンビニは潰れたから、次は喫茶店にしようかな。」

「潰しやがった。飽きたのかよ、コンビニ。」


「……あっ、こんな所に喫茶店がある。なんかゾクゾクしてきたな。ちょっと入ってみよう。」

「お帰りなさいませ、ご主人様!」

「思ってたのと違う。メイド喫茶とか聞いてない。」

「お帰りくださいませ、ご主人様!」

「客を即追い返すなよ。商売する気無いだろ。」

「萌え萌えきゅん!」

「やりたい事だけやるなよ。媚び以外も売ってくれよ。」

「ボクウリモノチガウヨ!」

「まただよ。コンビニ潰れたから転職したのか? いい加減にしてくれ。」


「お前、アルバイト向いてないな。」

「やっぱり庶民的な店舗ではボクを御し切れないか〜。」

「何処からその自信が来るんだよ。好き勝手やってるだけだろ。」

「好きな事を出来るのがこの世界の良い所でしょ。」

「悪い所でもある。」

「まあね。でも、こうやって君と馬鹿が出来るのは良い事だ。」

「……ああ。そうだな。」

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