第5話 装

「ボクだ! お菓子を寄越せー!」

「ほらよ!」

「いだっ! 何するんだよぉ。」

「拳が欲しいんだろ?」

「そんな聞き間違いある?」

「冗談だ。ほら、お菓子。」

「ありがと。……手作り?」

「さあな。原料を混ぜて焼いただけだ。」

「へぇ〜。」

「何だよ。」

「別にぃ〜? 嬉しいよ。ありがとね。」

「……どういたしまして。」


「で、その格好は何なんだ。」

「座敷童子をご存知無い?」

「知ってる。でもただ着物着てるだけにしか見えない。」

「良く見てよ。前髪パッツン。」

「前髪はいつもそうだろ。おかっぱにしてこいよ。」

「え〜。可愛くなーい!」

「そもそもハロウィンに座敷童子は合わないだろ。」


「君だってコスプレしてるじゃん。」

「は? おい、勝手に着せ替えるなって言ってるだろ。」

「可愛い猫ちゃんだねぇ〜!」

「……トリック、トリック、トリック。お菓子は要らない、悪戯させろ。」

「本気だ……。ほらほら、猫缶は如何かにゃ〜……?」

「にゃん!」

「ねこぱんち!」


「今日の天気は晴れのちカボチャ。」

「少し飛び過ぎじゃあないか? ジャック・オ・ランタン。」

「ハロウィンだからね。それはもう飛びまくるよ。」

「勢いが豪雨のそれと同じなんだよ。もっとふわふわと漂う物だと思ってた。」

「パンプキン・ミーティア。これも魔法の一つさ。」

「ノリで魔法作るな。笑えそうで笑えないんだよ、質量的に。」


「ああ、もう十二時なんだ。カボチャの馬車がお迎えに来ちゃった。」

「いつからシンデレラになったんだよ、座敷童子。」

「灰被りと猫被り、どっちが良いかな。」

「被らせないからな。」

「残念。じゃあ、君がボク被りになる?」

「勝手にしろ。」

「わ〜い!」

「……軽い奴。」

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