第4話 秋

「紅葉と月とボクが綺麗だね!」

「紅葉狩りか、月見か。迷うな。」

「ボク狩りとボク見は?」

「いつも見てる。」

「いつでも綺麗な物を見られるなんて、君って奴は幸せ者だよね〜。」

「ああ、そうだな。」

「……あのさ。ボクばっかり見るじゃん。すごい見てくるじゃん。」

「お前は植物だったんだな。紅葉してるぞ。」

「う、うるさ〜い! 見るの禁止!」


「紅葉は綺麗なだけじゃあないよ。集めて焚き火にだって出来る。」

「ほら、お芋。」

「そのまま投げ入れる奴があるかい?」

「古くはそうしてたんじゃあないのか。」

「なんで石焼きって付いてるか知ってる? 焚き火にぶち込んだら灰だらけになるでしょ?」

「昔の人は賢いな。電子レンジで焼き芋を作るオレはもっと賢いんじゃあないか?」

「君って結構馬鹿だよね。」

「馬鹿でも良いさ。」


「綺麗だね。」

「ああ。」

「月が、綺麗だね。」

「ああ。」

「……死んでも良いわ!」

「何だよ、急に。」

「お約束とか様式美って知らない? 月が綺麗だって言われたら、死んでも良いって返す物なんだよ。」

「まだ死にたくないし。お前は食べないのか? 月見団子。」

「食べる。」


「秋も大変だよね。接頭に色々付けられてさ。」

「紅葉、食欲、読書、スポーツ。収穫の時期でもあるな。」

「実りの秋。君も、随分と実ってるね。」

「セクハラかよ。」

「フフフッ、よいではないか〜!」

「良くない。眠りの秋にしてやろうか。」

「ひえぇ。……添い寝してくれる?」

「……仕方の無い奴だ。」


「おい、まだ秋のはずだろ。」

「秋は秋でも晩秋さ。雪が降る事だってある。」

「雪は冬の季語だろ。」

「雪月ボク。最高に綺麗だと思わない?」

「とんでもないナルシストだ。花は何処へ行った。」

「ボクの目の前に。」

「……うっさい。」

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