第3話 演

「ああ、ロミオ! あなたはどうしてロミオなの!」

「そう名付けられたからだろ?」

「水死体の様に冷めてるね、ジュリエット。」

「それはオフィーリアだ。名前を間違えるのは失礼だと思わないのか。」

「ナンセンスだね。ただのキャラクターに失礼も何も無いでしょ。」

「……ああ、そうだな。」


「文化祭にはまだ早いだろ。」

「まだ夏休みだからね。なんで君は学校に居るんだい?」

「お前が居るから。」

「ふ、ふ〜ん。」

「何だよ。」

「暇な奴だなぁって。」

「お互い様だ。」

「フッ、そうだね。」


「生きるべきか、死ぬべきか。」

「またかよ。観客の居ない舞台なんてやる意味あるのか?」

「君は見てくれるでしょ?」

「断る。一緒に喜劇を演じる方が良い。」

「悲劇は嫌い?」

「楽しいとは思えないな。」

「ボクは好きだけどなぁ。自虐的になれるし。」

「縁起でもない。」

「演技だけに?」

「……幕を下ろしたくなった。」


「ああロミオ、どうしてボクを置いていってしまうの! あら、こんな所に短剣が。グサッ! うっ……。」

「急に大根芝居になるなよ、ジュリエット。」

「引っ込むナイフ。喜劇には丁度良い小道具でしょ。」

「何処から出したんだよ。何だよ、その看板。」

「ドッキリ大成功! ……誰を引っ掛けるんだろうね?」

「観客以外に居るのか?」

「モンタギューとキャピュレット。ハッピーエンドになるかもね。」

「良いな。どんでん返しは好きだ。」


「演じるのって楽しいか?」

「うん。主役級しか出来ないのは玉に瑕だけどね。ほら、ボクって美少女だから。」

「はっ。……時よ止まれ。お前は美しい。」

「ちょっと、勝手に死なないでよ。」

「美しいのは当然だ。この世界に醜い物なんて無い。」

「自画自賛?」

「自虐だ。見た目程誤魔化しの効く物は無い。人間はいつだって、そういう物に欺かれる。」

「何だ、続きか。君も楽しんでるみたいで良かった。」

「ああ。遊びとしてなら悪くないな。」

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