第2話 夏

「ボクって良い子だよね。」

「本当に良い子は自称しない。」

「だからサンタさんも来てくれると思うんだ。」

「聞けよ。」

「プレゼントは何をお願いしようかな。」

「今、夏だろ。気が早過ぎる。」


「半袖にしただけで夏服って、手抜きだと思わない?」

「別に。普通だろ。」

「普通なんてつまらないよ。」

「制服に面白さは求めてない。」

「服の内側に水が滲み出るとかどう?」

「汗にしか見えないだろ。」

「熱中症になっても水分補給出来るよ。自分のは口が届かないから、君のを飲む事になるけど。」

「絵面が酷い。やめろ、舐めようとするな。」


「雲一つ無い真っ青な空だね。」

「台風が過ぎたからな。」

「一瞬だったね。風速二百キロくらいかな?」

「何も残らないんじゃあないか?」

「ボク達が残っていれば良いのさ。学校だって、ほら元通り。」

「今日は休みだぞ。」

「警報出ちゃってたか〜。」


「空がどうして青いのか知ってる?」

「実は海だからだ。」

「うわっ、落ちる……!?」

「空に落ちる。詩人になった気分だな。」

「ざぶーん。急に世界が逆さまになるのは詩的な表現なのかな?」

「ホットケーキでも作ってやろうか?」

「君、引っくり返すの好きだよね。後で作って。」


「フッ。このボクのセクシーな水着姿を目に焼き付けると良い。」

「いつ着替えたんだ。」

「瞬間早着替え。ほら、君も水着じゃあないか。」

「勝手に着せ替えるな。」

「認めよう。セクシー度は君の方が上だと。だけど可愛さはボクの方が……。」

「見るな。……恥ずかしいだろ。」

「ふうん、成る程ね。これで勝ったと思うなよぉ。」

「お前が勝手に負けてるだけだ。」


「はははっ! 楽しいな!」

「フフッ! そうだね!」

「水遊びなんて久しぶりだ!」

「童心に帰るって、こんな感じかも!」

「何言ってんだ。オレ達は子供だろ。」

「急に冷めるのやめようよ。」

「大人にはなりたくない。」

「君の体は大人っぽいけどね。」

「そういうのも嫌だ。」

「……ごめん。」


「プール上がりのカルキの匂いって好きなんだよね。」

「今は海上がりだ。」

「潮の匂いがする?」

「いいや、空の匂いがするんじゃあないか?」

「空の匂いって何? えっ、ちょっ、何嗅いでんの!?」

「……お前の匂いしかしないな。」

「普通に恥ずかしいんですけど!?」

「オレは好きだ。」

「……君も偶に話を聞かないよね。」

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