仮想退廃アイディール

清水悠生

第1話 始

「世界が作られた物だったらどうする?」

「別に。楽しく生きられればそれで良いだろ。」

「まあ、君はそういう奴だよね。」


「で? お前はどうするんだ?」

「一度ブッ壊して、もっと楽しい世界を作りたい。」

「ふうん。モザイク画?」

「綺麗だよね。ゴミの寄せ集めなのに。」

「酷い言い方だな。」

「割れたガラスは片付ける物だよ。普通はそのまま不燃ゴミとして捨てられるのさ。」


「態々ゴミにする事は無いだろ。」

「綺麗なガラスは割りたくなるんだ。十五歳だからね。」

「……古過ぎ。なんか混ざってるし。」

「知ってるんだ?」

「まあ、聴いた事くらいはな。」


「この世界はボクが作った。」

「何だ、突然。」

「この教室も、校舎も、ボク達が着ている制服も、ボクが作ったんだ。」

「知ってる。中二病ってのだろ、それ。」

「ええい、うるさいな。君もボクが作ったっていうのに。」


「そうか。創造主様、今日のご飯は用意しとけよ。」

「いやいや、君も手伝ってよ。」

「創造主様からしたら、オレなんてペットみたいなもんだろ。ちゃんと世話しろよ。」

「へえ? 可愛がっても良いのかい?」

「おい、やめろ。勝手に触るな。」

「あだっ! そんなぁ〜。」


「つまりだよ、君のアイデンティティは本当に君の物なのかい?」

「何だ、哲学的な事が言いたかったのかよ。」

「最初からそう言ってるでしょ!」

「言ってない。虚言癖も併発してるのか?」

「何でもかんでも病名付けるのはどうかと思うね。」

「嘘吐き。」

「凹むからやめて。」


「一過性思春期妄想症候群。」

「病名付けてるし。お前も一過性で済めば良いな。」

「慢性になったら世界だって作れるかもしれないよ?」

「はっ。いつまでも創造主気分で居られると思うなよ。その座はオレが頂くんだからな。」

「ライバルキャラ? なんか噛ませっぽい。君、そういうノリ好きだよね。」


「この世界はオレが作った。」

「もう下克上されてしまった。」

「お前と居るために作ったんだ。」

「え? えぇ〜……?」

「嫌か?」

「その言い方はずるくない?」

「別に、そんなもんで良いだろ。世界が在る理由なんて。」

「……うん、そうだね。」

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