第5話 カッコいいな!


 





 

 水瀬「真綾と付き合いたいんでしょ?」




 「」





 一瞬呼吸が止まった




 そして、






「えっ、ええっ、ちょっ…こ、こんなとこで…そ、そんな……え?マジで…え……」





 めちゃめちゃ吃った




 水瀬「」



 水瀬は呆れた表情をして俺を見てきた



 そして、



 水瀬「………テツは真綾のことを【今は】どう思ってるの?」



 「お前には関係ないだろ」プイッ





 俺は水瀬から顔を背けた





 水瀬「………………」



 「それより一緒に帰りたいってのはこれを聞くため?」



 俺は話をはぐらかした




 水瀬「……」



 「つーか、お前は知ってるだろ。俺が元宮をどう思ってるかなんて」



 水瀬「そうだね……知ってるよ。でも、あんたがいつまでもウジウジしてるようなウジ虫だから気になっただけ」

(まぁ、それは真綾もだけど)





 「……………」





 水瀬「アンタも分かってると思うけど長引けば長引くほど面倒にはなってくよ?」



 「うるせっ、知ってるよ……」



 水瀬「………」

 (私も人のこと言えないけどね……)



 「じゃあ、この話はおしまい。行くぞ」スタ スタ




 俺は食い気味に話を遮断して水瀬を急かした




 水瀬「……はいはい、行きましょうか〜」クス




 

 



 水瀬が何を思って聞いてきたかは分からない



 けど、



 応援してくれてるのは分かっていた

 

 

 多分…というか絶対水瀬は元宮が誰が好きかも知ってる






 誰なんだろ



























 ボフッ

 


 「疲れたー」



 俺はそう言いながらベッドに寝転がる



 バイト(寿司屋)を終え20時30分に家に帰ってきたところだ





 政志「アニキー、飯出来たぞー」





 弟の政志に呼ばれ俺は飯を食いに向かった


 

 



 





 モグモグ




 「お前、今日のアジの味、ちょっとしょっぱいぞ」


 

 政志「そんなつまんねぇこと言うなら食うなよ」






 親父や母さんは大体いつも20時過ぎ頃帰ってくる。だから、俺達兄弟は大抵2人で飯を食うことが多い




 ガチャっ





 雅恵「ただいまー」



 政志「あ、母さん」



 「お帰りー」モグモグ



 雅恵「テツー」



 「ん?」










 雅恵「今、真綾ちゃんが家の前にいるわよ」










 ブフッ!!



 政志「ちょっ!!止めろよきたねぇなぁ」

 


 「……………え?」



 俺は驚きのあまり吹き出してしまった




 「何でいるの?」




 雅恵「いやね、たまたま家の前であったのよ」




 元宮と俺の家は幼馴染なだけあって一応近い



 それで、親同士もめっちゃ仲が良い




 雅恵「それで、ほんと久しぶりだから話してたのよ。真綾ちゃんも大人びちゃって……ほんと成長したわよね!」



 「まぁ、そりゃあ………」



 雅恵「だから、会ってきなさいよ」



 「うぇっ?」



 雅恵「学校でも同じクラスだけど正直、あまり話せてないでしょ?アンタ根暗な無愛想だし」



 「うるせっ」



 雅恵「ちょっと話してきなさいよっ」グイっ



 「え、あ……」




 バタン!




 なされるがままにリビングを追い出された俺




 政志「【まー姉】か……いいよなー、あんな純粋で綺麗で優しい人が幼馴染なんて」



 雅恵「何言ってんのよ。アンタにもいるじゃない」



 政志「いねぇよ」



 雅恵「【リツコちゃん】がいるじゃない」





 政志「それ、グラビアアイドルな!?ていうか推しな!?何で知ってんだよ!!」



 















 スッ




 俺は玄関の前で少しチキっていた



 「……………」



 正直、こういう何の前触れもなしに会うのは得意ではない



 幼馴染だけど、なんて言うか気まずい



 「……………よしっ」パンッ




 取っ手を握った手に喝を入れてドアを開けた









 「………………」







 いる








 夜の街灯の灯りに照らされて髪が茶色く光り、風で髪の毛が舞っていた





 元宮「あ」





 気づいてこちらを見てきたその表情は嬉しそうな感じで、顔が少し赤らみ、その大きな優しそうな瞳は俺を見つめていた

 




 「……………」



 元宮「こんばんわ、さっきぶりだね」クス






 ああ





 「こ…こんばんは、そ、そうだね、さっきぶりだ」




 ああああああ……





 元宮「部活帰りでたまたま哲也君のお母さんに会ってね」



 「そうなんだ……あ、部活お疲れ様」



 元宮「ありがとう」ニコ







 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!









 天使だ







 元宮「?」




 俺はあまりの可愛さに目を合わす事が出来なかった



 唇にばかりしか目がいかねぇ




 「……………」



 元宮「どうしたの?私の唇、何か付いてるかな?」



 「……………あ、あぁ、いや、何もついてないよ!ごめん、話してるのに目を合わせてなくて」

 


 元宮「大丈夫だよ」クス


 


 ここから少し沈黙が続いた





 元宮「哲也君」



 「何?」




 情けないが会ってからほとんど元宮が話し始めてる




 元宮「哲也君って………」

 



 「……………」




 元宮「ごめん、やっぱ何でもない」



 「そ、そう……」




 何を言おうとしたんだ?




 元宮「そ、それより!!もうすぐ体育祭だよね!!」



 「!…あー、もうそんな時期か」



 元宮「哲也君は何の種目やろうと思ってる?」



 「え、んーー……100m走と綱引きを選択しようと思ってるよ」



 うちの学校の体育祭は2種目は絶対選ぶよう言われている。その中で人気のない400m走とクラス対抗リレーはくじ引きで決まる



 元宮「哲也君って短距離は得意だもんね」



 「そういう元宮も中学の頃100mで陸上部の短距離の人と同じくらいの実力がなかたっけ?」



 元宮「まぁ、結構走り込みはしてたからね」クス






 元宮は小学生の頃からフェンシングをやっていた






 元宮「でも最近、短距離のアズちゃん(雨宮梓)と一緒に走ってみたけどやっぱ陸上部は走り方が綺麗で無駄があまり無いんだよね。だから多分今は陸上部の人と走ったら勝てないよ。それに……





 「……………」





 元宮が楽しそうに喋る姿を見て俺は……










 「…………凄いよ」










 元宮「え?」





 「そうやって、自分の好きなものに本気で熱中出来ることが凄いって……なんか不意に思ってさ」




 元宮「…………」







 「カッコいいな!」ニコ







 元宮「」



 「あれ……元宮?」


 

 元宮「…あ、何でもない………」




 「………………」




 元宮「……………








       【テツ君】」





 「……え」








 元宮「ありがとね」ニコ







 「」





 え?あれ、今【テツ君】って……



 て言うかそれよりも……






 元宮「ごめん、急に【昔の呼び方】にしちゃって」



 「あ、いやいや!何と呼んでも構わないよ!」



 元宮「………そう……」



 「………………」









 急に元宮の空気が変わった気がした




 何でだ?










 続

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