春の初めの頃である。

大陸の南西の海に面した場所に、風光明媚なセイリジン王国はある。

一方を海に臨み、他方は山を背にするように広がる王都には、ふんだんに山の幸、海の幸を取り揃え、港にはずらりと商船が並ぶ。

そんな活気のある王都の日が昇り始めた頃の朝焼けに照らされた浜辺。

海風を受けて、古びた修道女の服を着こんだ少女が、なびくを押さえながら、足元の貝を拾って慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。

桃色の瞳をうっとりと細める姿は、神秘的ですらある。

実際のところ、少女は心の内で、歓喜に震えていた。

――大物だ。

少女の近くには、八歳から十二歳頃までの子どもたちが四人ほど同じように、貝を拾っては手持ちの網に入れていく。黙々と作業をこなし、きびきびと行動する様は、一種異様な空気である。どこかの軍隊のように規律がとれている。

「おおーい、リリィ。朝から精が出るなあ」

朝一番の舟に乗り込んで沖まで漁に出ていた漁師が浜辺にいる少女に気が付いて声をかけてくる。

それに、大きく手を振って答えた。

「おはようございます、今日も大漁ですかー？」

「おうよ、そっちはどうだ」

「おかげ様でー」

網に入ったたくさんの貝を見せれば、漁師もにかりと笑う。

過ぎ去った舟の上で少女に声をかけた漁師に入ったばかりの新入りが不思議そうに声をかけた。

「あの子、修道女ですか？」

「そうか、お前は王都に来たばっかりだから知らんのか。あれが、今王都で話題になっている名物の『慈愛の聖母』様だ」

「ああ、あれが……」

小柄な少女は修道女の格好をして、日夜オンボロ孤児院で十五人の子どもたちと年老いた院長と暮らしているという。

王都で噂になっている『慈愛の聖母』の話を思い浮かべて、首を傾げた。

――儚げというよりは逞しいような？

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