第25話 ゾンビ伝説6
珈琲館のドアを開くと店内が一望できる。入り口に近い部分が禁煙エリアであり、そして店内の奥が禁断の喫煙エリアとなっている。
「あのーお嬢さま、もちろん喫煙でございましょうね?」
なかなかのイケメン店員が、頬を紅く染めながら興奮で震える声で耳元で囁く。
「Oui, c'est ça! 」
店員の耳に生暑い息をフーッと吹き込みながら、甘くせつなくこたえる。
4人席に腰を下ろした。周りの客の見つめる目線が熱い。雪色のピンヒールの足元から、頭部に稲妻ラインが走るマルガリータまで、舐めるようにゆっくりと・・・・・
いつものようにさり気なく足を組む。自分でも既にわかっている。みんなの目線がマッコリと膨らむ足の付け根に注がれていることを。
「お嬢さま、オーダーをいただいても、よろしいでごさいましょうか?」
「ホットコーヒーお願いざぃます。しかも価格の高いほうのマンデリンをヨロピク。シュガー、ミルクのほうは結構ざぃます。それにキューピーマヨをヨロピクピク」
この珈琲館では内緒ではあるがホットコーヒーは何種類かはある。しかも高いものと安いものがあるのだ。
この店のオリジナルブレンドとアメリカンコーヒーのみがやや安く、炭火珈琲その他コーヒーは高めの価格設定となっている。
飲んでみると、たいした変わりはないように思える。しかしこの店の店員は必ず、いや確信的に価格の高いほうを客にすすめることになっている。
たぶんこの店のオーナーは間違いなく、魔界の使徒なのかもしれない。
安いほうのコーヒーを頼むと、必ずや店員の目がギラリと光る。あくまでも想像ではあるが、まるでこう思っているかように・・・・・
『チッ、この貧乏庶民が!』
そう思われるのが怖くて、訪れる客のほとんどすべてが、泣きながら高いほうをオーダーする。
しかしごるこは違う、コーヒーにうるさいのだ。自宅ではマンデリンにマヨを軽く浮かべて、香りとコクを楽しんでいる。
ごるごのオーダーをうかがった店員が、震えながらカウンターに伝える。
「オーダー願います。マンちゃん1、それにマヨ1願います」
「おい、マヨって何だ、何に使うんだ」
「私だってわかりませんよ」
「なぜ確認を取らなかった。お前、見惚れていたんじゃないのか?」
「ボクはあの人の胸元なんか、見ていませんよ」
「まったく若い奴はいい女を見ると、すぐにおっ立てるんだから」
「チーフそんなことありませんよ。それに自分は伊達に小さいですから」
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