第22話 ゾンビ伝説3
「西の都、立川でどうかな」
「先生、八王子じゃいけないざぃますか?立川も八王子も対して変わらないざぃます」
「ごるごくん、わかってるだろう。ボクは君の所のボスが嫌いなんだよ。落ち武者ハゲの腐れ外道が・・・・・」
腐れ外道とは、作品をボロクソにこき下ろす、ごるごの属するホラー部門の編集長の亀梨いや髪無和也のことである。
「ホーッホッホホ、先生はうちのボス嫌いざぃますねぇ」
昨日、電話でのやり取りで、立川待ち合わせが決まったところである。やはり人々は、何故か立川に惹かれるのだ。
そして今、ごるごは海のように深く、限りなく広がる空のように無限に、悩んでいた。
待ち人にまだ会えぬ、この切ない乙女心を愛で満たしてくれるランチを探して・・・・・
ヴィトンバッグから、いつの間にか取り出した細身のメーソールに、カチンと粋な音を奏でるジッポのライターで、幸せの炎を送る。
ライターはもちろん限定品のトルーネードドラゴン。あえて路上歩行喫煙を敢行する。
立川駅北口と南口に各1か所ずつの2ヶ所を除いて、駅周辺のほとんどのエリアを完全禁煙にしたファッショ的な自慰行為を、ごるごは許してはいなかった。
虐げられた良識的な喫煙者の、ささやかな幸せ空間であった喫煙エリアを魔女狩りのごとくそのほとんどを閉鎖した。
ファッショな健康オタクに、いつの日か人生の闇を見せてやる。そう強く心に誓ってきた。
賢明な読者の皆さんなら知り得ていると思うが、かって禁煙を国家的に国民に押し付けた最初の政治家は、あの恐怖の独裁者である。
国民の趣味や嗜好を、公的権力をもって強引に押しつけるような国家や地方自治体、政治家などは、まさにあの独裁者の発想と同様である。
ごるごは公的権力に強く反発しながら、あえて路上喫煙をしながら歩く。まるでゆりの花のように艶やかに・・・・・
しかしその濡れた瞳は定まらぬのだ。悩みが大きすぎるがゆえに。
ゴルゴを悩ませているのは、ただひとつ、円高に依存する日本経済ではない。北朝鮮や中国の暴挙でもない。
小腹を空かせて涙に濡れる子兎してのように切なく求めるものはランチ、つまり昼飯なのだ。
立川駅南口から7分程度歩くと、右側に『スタ丼』の看板がごるごを誘う。
ドアを開けると粋な声がかかる。
「へい、らっしゃぁい!」
店員のお兄ちゃんの目が集まる。呆然とごるごを見つめている。あまりの妖艶さ、あまりの清純さに。
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