第21話 ゾンビ伝説2

 今日の予定は、依頼した先生の原稿受け取りである。


 ごるごの職場は八王子にある。業界大手の出版関係の企業である。ちなみに彼女は、編集部ではマドモアゼルと呼ばている。


 「デジュネにするでしゅね」、甘いフランス訛りの言葉が流れる。無意識に洩らす言の葉に、フランス訛りがつい出てしまうのだ、


 そう、ごるごはロシア生まれのフランス育ちと噂されている。真偽の程は定かではないが・・・・・


 ここは東京都の西の都、立川である。はるか昔の古き神々の時代から、この地は聖地と呼ばれていた。


 かの歴史上の傑物あの織田信長も、天下統一の志半ばで倒れなければ、立川に築城し天下に号令する、そのような夢を側近に漏らしていたと聞き及んでいる。


 信長の没後、天下統一を果たした豊臣秀吉や徳川家康も然りである。やはり本来は立川を目指していたと伝えられている。


 秀吉は、愚かな取り巻きのハニートラップで名古屋に留まり、家康は極度の肥満が故に、立川までの遠征を諦めたのだと言われている。


 立川市の地下には大きな空洞があり、その空洞に古き神々が存した黄金都市が、存在するといわれている。


 その黄金都市の全てが純金で造られ、資産総額は地球全体に存在するお金の総額、17京6000兆円を大幅に上回る5963垓4649京5050兆円程度だと言われる。


 その資産を完璧にに守護するために、横田基地に米軍を配置している。当然ではあるが自衛隊基地も同様である。


 ほとんどの立川市民、いや日本国民はこの驚嘆な事実を知らない。国会議員でさえも知る者はいない。


 この国家的機密を知り得る者は、黄金の国、日本を束ねる時の総理大臣のみである。


 さらに総理交代時には、後任総理に引継ぎの後、後任総理によって、前任総理はその黄金都市の記憶は消去される。


 秘密裏にそのように聞き及んでいる。闇を支配し、闇に潜む神々の末裔以外は・・・・・


 しかし黄金都市伝説を全く知らぬ庶民でさえ、隠された黄金の異様な吸引力に惹かれ、いつの間にか立川に吸い寄せられていく。


 平和な日常生活を送る主婦でさえ、時間が空くとふと思うのだ。『今日は立川に行かなくちゃ』と。


 本来、立川市など江戸時代から続くフロム中武以外は、何も無い平凡な地方都市である。


 しかし何故か惹かれる、吸い寄せられるのだ。


 今日待ち合わせの執筆依頼した先生も、自宅は大都会の渋谷ではあるが、待ち合わせ場所を問い合わせると、迷いもなくこう答えた。

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