第17話 畏れうた1
あなたは知っているだろうか?
東京は西部地域にある多摩地区に、古くから伝わる『畏れうた』を・・・・・
帝国大学の終身名誉教授だった古代神学の第一人者、 神頼信二郎(かみだのみ しんじろう)氏、彼が偶然発見した古代の畏れうた。
東京とは名ばかり西部地域にある多摩地区の鬱蒼と茂った某山林で、信二郎が発掘作業を行っていた某日の出来事である。
たった今飲んだばかりの熟成したほうじ茶のせいか、信二郎は突然、強烈な尿意に襲われた。
まるで何かの前触れのように・・・・・
慌てて近くの背が高い茂みの中に、小さな前を抑えたまま駆け込んだ。
小さなお友達を得意げに放り出し、分不相応な激流を放出しているとき、茂みのさらに奥、鬱蒼と茂る薄暗き木々の間に、如何にも曰く有りげな洞穴を発見した。
小用のみでなく大用までをもしっかりと済ませ、近くの木の葉で始末した後、信二郎はその洞穴に入っていった。
陽の当たらない暗い山林の奥深く、先を塞ぐ切り立った崖に突き当たる崖面にボッカリと口を開けている。
洞穴の入り口の直径は1m50cmほどである。多摩の奥深くでは当然クマもオオカミも棲息する。もしかすると肉食獣の棲家である可能性もなくはない。
165cmほどの信二郎は腰を屈めて懐中電灯を点灯し、洞穴の入り口を潜った。
獣臭は全く感じられない。
むしろ香に似た不思議な香りが漂う。
何かある、必ず何かあるはずだ・・・・・
信二郎の本能がざわめく。洞穴を20mほど進むと突然空間が広がった。
ほんの直径1m50cm程の洞穴が、高さ、幅共に3mほどの広い空間に変貌した。
明らかに人工的に作られた空間である。もしや地球外の生物が作ったものなのか?
入り口のゴツゴツした感じは消え、床、天井、壁面共に磨き上げたように、ツルツルで豪華ホテルのホールのようだ。
しかも香に似た香りが漂っている。高さ、幅共に3mほどの空間を、信二郎は10m暗いゆっくりと進んだ。
香りがますます強くなり、明らかに人工的な工作物の感が強まる。暗闇にさし出した懐中電灯が、さらに大きな空間を照らし出していた。
50畳ほどはありそうだ。
まるで優雅なダンスホールである。
ホール風の空間に1歩足を踏み出すと、同時に、「カチッ」と何かのスイッチ音が響いた。
まるで満開の桜の花びらが空間いっぱいに舞い踊るような照明。目の前に桜色のダンスホールが広がっていた。
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