第13話 謎の指導員

 人気の無い品川埠頭の倉庫街、闇に閉ざされた人知れぬ不気味な空間の屹立する倉庫のひとつに、ぽっと小さな明かりが点っている。


 1階には窓ひとつさえない。外敵の侵入を防ぐための構造である。2階にある窓から、さりげなく卑猥なピンク色の灯りが、うっすら漏れている。


 この倉庫こそはヤツ、女装の魔女ごるごの根城である。ごるごの唯一の相棒、魔犬大河の隠れた魔窟でもある。


 信じられないことが起こっている・・・・・

 人を信じない孤高のごるごに、なんと来客のようである。


 室内を淡いピンク色の照明が妖しく照らしている。あの ごるごがまっちょりと くつろいでいる。


 自慢の黒のワンピを惜しげもなく脱ぎさり、まるで花嫁のような純白のブラと純白のTバック姿で、ワイングラスにたっぷり注いだコーラを楽しんでいる。


 魔犬大河さえもぷるぷる震えながら、部屋の薄暗い片隅に、きっちりとマーキングをしている。


 ごるごの前に密やかに座りし者。闇色の

ミニスカスーツを身に付け、微塵の隙さえない。


 わずかに切なく開いた両腿の隙間から、パープルの下着をさり気なくのぞかせている。


 『指導員』、ごるごの糖尿のように甘い囁きが相手に投げかけられた。


 驚きである。なんと、ごるごに指導員がいるなんて・・・・・


 話せば長くなるので短めに紹介しよう。


 来客は『指導員』。現在は某帝国の情報機関のリーダーであり、闇世界では腕利きの殺し屋とも噂されている男である。


 耳は猫耳で毛深く、面影はほとんど猫を思わせる。


 ミニスカスーツのジャケットの内ポケットには、ビストルと鰹節を密かに忍ばしている。


 「指導員お久し ぶりです」ごるごの甘い囁きが流れた。


 「かも しれにゃい・・・・・」


 指導員が猫なで声で、こぶしをきかせて答える。どれほど会えない期間があったのかは知らない。


 しかし、久しぶりの再開に、思わず股間が膨らむ2人であった。


 「久しぶりにやるかにゃ」


 「承知しました」


 凄腕の殺し屋と噂されるヤツと、某帝国の情報機関のリーダーである2人が、何やら練習を始めた。


 指導員はジャケットの懐の鰹節に、そしてごるごはマヨボトルで膨らむ白のTバックに神速で手を走らせる。


 闇に生きる全ての者たちが、恐れ敬い憧れる2人の男が、鰹節とマヨボトルを武器に

戦闘訓練を始めたのだ。


 空中に舞い踊る鰹節、迸るマヨの嵐、激しい訓練は長時間続いた。空が白々と明けるまで・・・・・


 指導員の正体が誰であるのか、またごるごに何を指導したのか、知る者など誰もいない。


 ぷるぷる震えながらウンチをしている魔犬大河以外は・・・・・


 伝説は続く・・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る