第4話 ぶりぶりエブリバディ
強面であるがピュア、マッチョであるがスウィート、ファショナブルでミステリアス、そう魔女ごるごは仕事の鬼と言われている。
上司の命令は絶対であり、例えそれが命を落とすことになっても受けて立つ。なぜかヤツが蒼ざめた顔をしている。強い決意をにじませたまま。
「ごるごくん、体調が悪そうだな。もしぶりでないなら、杉並の脱糞先生に資料を届けてもらえないかな?」
「Oui je comprends」
ロシア生まれフランス育ち、表情さえ変えずにヤツは応えた。チーフから資料を受け取るヤツの妖艶な下半身が一瞬震えた。
今日は風花が舞う凍える天気であるが、ヤツはイキって黒のノースリーブのミニスカワンピにピンクのピンヒールである。
昨夜はやたら安値の「ふぐ料理」で職場の新年会。みんなガツガツ食べた。まるで腹をすかせたライオンのように。
ヤツの口から遠慮がちに、小さな声が漏れた。
「まるでゴムでしゅ」
朝からきっちりぶりっていた。お腹にキリキリ差し込んでいた。昨日のゴムのようなふぐが合わなかったのかもしれない。
昨夜からトイレの便座を暖めていた。お腹はキリキリ痛み、お尻ほうはぶりぶりと過激な音を奏でていた。
今日は未だぶりである。杉並に向かう中央線の快速は思いのほか閑散としている。
向かいの席に座る好奇心が旺盛な女子高生が、ヤツの短めの黒ワンピの裾の乱れにことのほか熱い視線を送っていた。
幸いなことにシートの暖房が急激にお尻のExitに押し寄せるぶりを優しく宥めていた。阿佐ヶ谷に電車は滑り込み、一気に氷点下の外気にさらされる。
来たっ、来ちゃいました~。ぶりがきつく絞ったExitを厳しく攻め寄せる。
「もぉ ぶりなんだからぁ 」
一文字にくいしばったヤツの口から切ないうめきが漏れる。そのころ職場においても歴史を汚す陰惨な大事件が起きていた。
職場では大半の職員が既にぶりだった。やはり昨夜の安いゴムのようなふぐの呪いであろうか、皆が思う存分ぶりっていた。
部屋中に懐かしくかぐわしい香りが立ちこめ充満していた。トイレに続く通路は味噌色の痕跡に満ち溢れていた。
職員のある者は座ったまま下半身ををぶり色に染めて。そしてある者はズボンを下ろしたまま個室のドアの前で既に息絶えていた。
しかしさすが職場の責任者、チーフはただひとり素知らぬ顔で仕事を続けていた。
始業時以来まだズボンすら下ろしていない。恐るべし超人チーフ。例え用意周到に出勤時から装着した紙おむつの中に思う存分ぶりっていようと・・・・・
ヤツが阿佐ヶ谷駅の秘密の個室で容赦なくぶりっているころ、職場はひとりチーフのみ残して職員は次々と息絶え、味噌色の静寂のみが残っていた。
日本史を汚す凄惨な事件。『ぶりぶりエブリバディ』
読者の皆さんも
ぶりには格段の配意を願いたい。
伝説は続く・・・・・
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