第4話 かっぱ巻き

「近づくなよ! 近づくなよ!」

 そう言いながら小太り男は派手女を引きずって後退りする。


「い、嫌!」

 派手女は声を出すものの、小さくか細い。


「もしかして、テメェがミホにつきまとっていた、ストーカーか!?」

 金髪男が叫ぶ。


「助けて! コウジ」

 ミホはコウジに手を伸ばす。


 とりあえず、そういうことらしい。

 河童の俺には何の関係もないことではあるが。


 しかし、無視して列に並ぶこともできず、俺はその刑事ドラマ的展開を黙って見守った。


「そんな危ないことしちゃだめですよ。彼女を離して上げてください」

 カパカパ。


 なぜか先程まで痴漢の疑いをかけられていた河童が、コウジと一緒にストーカーの説得を試みる。


「アンタ……味方してくれるのか……」

 コウジは同士でも見つけたかのような視線を送る。


 もしかして、即興コントでも始まったのだろうか。


 里では天才子役として謳われた俺の実力を見せてやるのも一興かもしれない。


「い、嫌……来ないで!」

 ミホが叫ぶ。


 ん? 来ないで?


「お、お前! 近づくなリアル河童!」

 小太り男はミホに向けていたナイフを河童に向ける。


「え? いえ、だから、そんな危ないことは――」

「来ないでキモい! カビ臭っ! さっさと川に帰りなさいよ!」

「あっちいけ! かっぱ巻にして川に流すぞ!」


 河童の弁明を無視して、二人は河童を罵倒した。

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