第5話 『ゴダール』のケーキ
紅茶を入れたカップをテーブルの上に置くと、彼女はありがとうと言って微笑みながら、ケーキをフォークで切り分け、口に運んだ。
僕は様子を眺めながら、どうしてこうなったのかと考えていた。まさか、自分が女性と二人きりで過ごすことになるなんて思いもしなかった。しかも相手は、学校ではほとんど話したこともなかった同級生なのだ。
彼女は美味しそうにケーキを食べていた。さっきまで涙を流していたことなど忘れてしまったかのように幸せそうだった。
「このケーキ、凄くおいしい」
彼女はまた笑ったが、僕は素直に喜べなかった。何しろ、ケーキはお気に入りの店で自分の誕生日を祝うために買ってきたものだ。僕のためにケーキ屋まで行って選んだわけではない。
ケーキは『ゴダール』で売られているラズベリータルトで、彼女の好みに合ったものだ。彼女は甘い物が大好きなので、誕生日やクリスマスのときは必ずお気に入りの店でケーキを買い求めていたようだ。
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