第14話 未知の魔法



 怪我人を担ぎこんだ家へと赴き、空いたままの戸から覗き込むと色々な植物や粉の入った小瓶が沢山置かれていて、ここがお店なのだと初めて気が付いた。

 奥へと進んでいくと声が聴こえる。


「悪いが金は後から用意する! 今すぐこいつを診て貰いたいんだ!」


 その声に寝かされている怪我人に目を向けると、確かに放置したら危なそうな程に大怪我を負っていた。


「お前らなぁ……この前のもまだじゃないか。

 半月以上待っても支払いがされていないってのに、また付けでやれと言うのか?」


「こっちだって生活が成り立たなくなるだろ!」と頼みこまれている顔の良い優男は腕を組んで強い視線を返す。


「頼むよ! あんたの回復魔法がねぇと死んじまう!」


 その声に、僕は目を見開いて二人と目を見合わせた。


 回復魔法は教会の独占技術。つまりは利権だ。それもとても大きな。

 教会を支える根幹と言っていいくらいに大きく、教えた者を外に出すことは無い程のもの。

 僕の回復魔法は独自に開発した為、術式も違いがあるだろうし言い訳はつく。それでもかなり厄介な問題にはなるのは間違いないので隠しているもの。


 これを放置してはいけない、と一歩前に出る。


「ああ、すまないがここは僕が治療費を出すから診てやって貰えないだろうか?」


『えっ?』とその場の全員の視線がこちらへと向く。


「キミの腕を見せて欲しいだけだよ。有用なら僕もこの店を利用したいしね」


 どうかな、と金貨一枚を差し出す。

 いくら取るかは知らないが、貧民街で行う治療。これで十分な筈と手渡せば彼は「き、金貨!?」と驚きを見せた。


「そ、その恥ずかしながら金貨を出されてもお釣りが出せなくて……」

「そうか。ではいくらかな?」

「一応、一度の治療を大銅貨五枚でやっております……」


 えっ……

 それは流石に安過ぎないか?


 と思いつつも銀貨と交換すれば治療を始めてくれた。

 彼はそそくさと薬草を準備する様を見てホッとする。恐らく教会に何か言われる様なものではないだろうと。


 治療系統ならば散々調べたので僕も知見は深い。

 準備された二種類の薬草も普通に知っている一般的な最も安いものだ。

 しかし、僕が見たいのは薬ではない。魔法だ。


 普通に薬草をすりおろし始めた姿を見て『魔法というのは比喩表現だったのか?』と思ったのだが、彼は煎じ終わるとそれの前に魔導文字を浮かべた。

 円環が組まれていない平の魔法。本当に少しの効果しかあらわさないものだ。

 それを数十秒ほど掛け続けた後に、患部に薬を塗っていった。


「これで治療は完了です。その……神官様の魔法と比べると全然効果は低いものです。

 薬効を三倍程度にするのがやっとですから」


 使用人を連れていて金貨を見せたからか、彼は額に汗を滲ませ恐縮した様子を見せているが、僕の方もそれどころではなかった。


「いや、それが本当なら十分に素晴らしいよ……この魔法はどこで?」


 平の魔法でそこまで効果を表すならば、もしかしたらすごい事になる可能性も……と試してみたい気持ちに駆られる。

 当然、そうならない可能性も十分ある。薬草の効力を引き出す限界があるかもしれない。

 もう既に試された可能性のが高いだろう。とはいえ有効な技術には変わりない。


「祖母が若い頃王都の魔導専攻の学術研究所に勤めていた事があるそうで、魔法を弄っていたら偶然できたと……本当は円を組むらしいのですが、そこまで完成させる前に亡くなってしまって」


 どうやらお婆さんは元々この家での生まれだそうで、この町に戻ってきてからは貧民街の為に薬師の店を開いたのだとか。


 その時、偶々怪我をしていて薬を塗ったまま魔導文字の並べ替えをしていたら魔法の効果が発現して、治りの早さからもしかしてと試し効果を知ったのだとか。


「そ、それはまた凄い偶然だな。よければその技術、是非売って頂きたいのだが……」


 本当に凄いことだ……それが本当ならば研究のし甲斐がある。

 領主の権限をちらつかせてでも売って貰いたいくらいに有用そうだ……


 そう考えても居たのだが、彼は「売った後も使っていいのであれば構いませんが」と乗り気な姿勢を見せた。


「勿論構わない。使用を許してくれるなら金貨二十枚を即決で出そう。

 今後、この魔法を商業目的で使う場合は金貨三十枚を追加で出す。それで如何か?」

「えっ!? 金貨二十枚!? いや、そ、そんなに凄い魔法じゃありませんよ!?」


 彼にとっては給与十年分くらいの金額なのだろうが、新しい魔導技術というのは高いもの。

 一応、ハズレの可能性を鑑みての値段だ。場合によっては十倍払ってもおかしくない。

 公爵家の書庫と王都の図書館を調べつくした僕が存在すらも知らない医療用ともなれば、少なくとも世に出回っているものでないので安いくらいだ。


「心配する必要は無い。仮に期待を裏切った効果でも渡したお金の返却は絶対に求めない。

 安心して受け取ってくれていい」


 そうして話を纏めていると、治療を頼んでいた男から声を掛けられた。


「あの、借りた金はいつまでに返したら……」と、先ほどの治療費の請求について尋ねる彼。


「あれは私が魔法を見たくて出したものなので返金は必要ないよ。

 治療を見たかった時に偶々怪我人が居ただけの話。今回は運がよかったと思っていい」


 だから気にしなくていい、と伝えつつも薬師の彼に向きなおり魔法を見せて貰う。


「しかし……効力への強化か。単純だけど新たな試みだ」


 いや、剣の切れ味を増す術式もあるし、種別で言えば一応既存とも言えるか。


「ルン、支払いを」と告げると彼女は金貨を数え、彼に代金を差し出す。


「えっ……」と、彼は更なる困惑を見せる。教え終わる前に報酬を出されて驚いているのだろう。大金を先払いする場合は普通契約書を交わしてからだから。


 だがこれほどに単純な魔法なら一度見れば十分だ。平で浮かべた上に七文字だし。

 正式に買ったという事実を残しただけの話。


 困惑する彼に平で魔法を浮かべてもう習得した事を示し、ルンが用意した書面にサインを貰う。


「これで契約は完了だ。追加金は運がよければくらいに思っておいてくれ」

「いえ……十分です。本当にいいので?」


「ああ。面倒を見ている者たちが大勢いるのだ。どちらにしてもこの力はきっと役に立つ」と返し、魔法の実験の為にと薬草を売って貰っていると、何故か治療を頼んでいた男たちがこちらに向かって頭をさげた。


「あの! できたら俺たちも雇って貰えませんか!?」


 人を使っていると言葉を聞いたからだろう。

 全うな仕事ならなんでもします、と突然言い出して頭を下げる四人の男たち。

 いきなりすぎる言葉に理由を尋ねると、彼らは身の上や使って欲しい理由を語る。


 要約すると市民権を持ってないと碌に雇って貰う事もできず仕事が無いということだった。

 ゴロツキ扱いをされ、真っ当な仕事だと日雇いの力仕事が限界。

 生きていく為にどうにか稼ごうと裏社会に足を踏み入れたものの、人さらいを命じられ流石にそれはできないと断ったらボコボコにされたそうだ。


 最初に前に出て嫌だと言った彼が一番手酷くやられ、何とか頭を下げてやり過ごした後ここに駆け込んだそうだ。

 それが先ほど治療を受けた男らしい。


「えーと……真面目に働くならいいよ。

 けど、今はデート中だから明日でもいい?」

「あのリヒト様、デートは明日にしたら如何でしょう?」


 ああ、確かに。

 もうそんな空気じゃなくなってるしなぁ……


「ごめんね。じゃあそうしようか」

「はいっ!」


 デートを楽しみにしていただろうに、にっこりと笑って受け入れてくれるリーエル。

 心がマジ天使。


「じゃあ、先ずは治療魔法の実験台になってくれ。御代に昼飯を奢る」と、彼らに頼む。


 一番酷いのが担ぎ込まれた男であっただけで彼らも怪我を負っている。

 なので実験させて欲しい。上手くいけば怪我も治ってすぐ働けるだろ、と。


 そうして買い取った薬草をすり潰して貰い、効能を強化する魔法を弄り円環を組む。

 付け足したのは補助になる魔導文字の組み合わせ。

 七文字じゃ円環を綺麗に組めないので、効率が少し下がる。

 文字数を増やすことでそれを回避しつつ補助も付けた。


「さて、どれほどかね……」とガッツリ魔力を込めて強化した薬草を酷い怪我に塗りたくる。


 数分ほど掛けて観察すればじわじわとゆっくり腫れが引いていく様が見て取れた。

 回復魔法と比べると残念に感じるほど遅いが、有ると無いとでは大違い過ぎる程度の効果は出ている。

 まだ、弄れるところが多々ある事を考えればもう既にとんでもない魔法と言えるだろう。


「す、凄すぎる……新しい魔法を一瞬で完成させるなんて。金貨を軽く出せるお人な訳だ」


 既存の魔導文字配列をいくつか付け足しただけなのだが円環を組んで追加させたことで別物に見えた様だ。

 

「いいや、キミの祖母が凄いんだよ。勉強すれば魔法効率は上げられるが組み合わせの方は自分で新たに探し出さないといけないからね」


 そう。厄介な事に組み合わせると結構な確率で効果が予測の利かない別物になる。だから自分の欲しい結果を探すとなると何十万、何百万と組み合わせを変えていく必要がある。

 目的の結果が関係無い効果の魔導文字の組み合わせの変化で起こせる事象だったり、文字数が多いものともなると、もう狙っての発明は不可能なレベルに近い。


 ただ、魔法文は終わらせ方があり、完成させた一文の場合は続けて付け足しても変化は起きず、後の文の効果が追加される形になる。

 魔導文字を覚えた後に完成形の文を学び修めた者が魔法を使えるようになるのである。


 七文字程度なら調べ尽くされていると思っていたのだが、これは僕が知らない魔法。


 視覚的変化を表さない効力だし治療系で僕が知らないのだから未発見のものの可能性が高い。

 組み合わせても何も起こらなければ、多少調べる程度でスルーされるのでそれほど不思議ではないが、ここで出会えたのは僥倖だ。


 そう考えるともしかしたら全部に何かしらの効果があるのだろうか、と深く考え込まされた。


 そうして思考している間に彼ら全員の傷も癒えた様で、約束通り飯を奢ると街中に出て皆で外食を取りながら談笑する。


「とりあえず道の舗装でかなり大口の雇用ができるんだけど、そっちはもう少し準備がいる。

 立ち上げる商会の小間使いの方が直ぐ働けると思うんだけど、どうかな?」


 ご飯が食べ終わり、今後の予定の話をしようと思い彼らにどっちがいいかを尋ねると、薬師の彼まで一緒になり目を見合わせて驚いた様子を見せている。


「あの……もしかして、辺境伯様の一族の御方だったり、とか……?」


 これからも良い関係を築きたいと思い食事にも連れて来た薬師の彼レイヒムが、プルプルと震えながら問いかける。

 道路の舗装は領主の仕事だと知っていたのだろう。

 大袈裟な反応がなんかちょっと面白いと思い、立ち上がりリーエルを称える様に告げる。


「はっはっはぁ! 一族などという言い方は正しいとは言えないなぁ。

 このお方は辺境伯様その人である! 当代のご当主。リーエル・ハインフィード様だ!」


「「「えええっ!?」」」と、僕の大仰な紹介の仕方に合わせたかの様に大袈裟に驚く彼ら。


「ちょっと、リヒト様!? ここでそんな風に大仰に言う必要ないですわよね?」

「あはは、ごめんね。ちょっと彼らの反応が面白くて。

 皆も今日はお忍びだからこれまで通りでいいから」


 固まっている六人にそう告げるが、しどろもどろになっている。


 あら……権力に無縁の彼らには衝撃が強すぎたか。

 こうなってしまっては逆に気を使ってはダメだな。尊大に言いつけるくらいで行かなきゃ簡単に元には戻らなそうだ。

 

「何を固まっている。喜べ、お前らは領主の元で働けることになったのだぞ。

 支払いはいいし、裏社会の奴らの様な無理も言わない。街の者たちも羨む職だ」


 姿勢を正して少し強い口調で言えば、彼らもぴちっと身を正した。


「とりあえず商会を立ち上げるにも段取りがいる。お前たちの中で読み書きができる者は?」


 そう尋ねると、二人が手を上げた。

 名を尋ねればカッシュとルベンという名前だそうで、兄弟だと言う。

 一人も居ないだろうと思いつつも聞いたので二人も居て驚いたが、親が元々街中の商人だったそうで、もう亡くなってしまってはいるが簡単な読み書きや計算は教わっているらしい。

 親が事業の失敗で借金を負いその関係で無茶をして殺されてしまい、二人は住む場所を追われ貧民街に移ったのだとか。

 それだけの技量があれば働けるだろうと問い返したのだが、市民権が無いと粗暴者と思われ事務仕事をやらせるほどの信用など到底して貰えないらしい。


「ふむ。雇える僕としては朗報だな。では支度金を出すから商会を立ち上げてこい。

 名目は魔道具の製作を予定と告げておけばいい。いつでも変更はできるしな」


「魔道具、ですか……?」と、リーエルが小首を傾げる。


「うん。さっきとんでもないものを買ってしまったしね。

 僕なら魔道具の設計図を書ける。キミなら作り方を指導できる者も呼べるだろう?」

「あっ、そうですね。ここなら高級素材も他より安く手に入りますし」


 そう。関税も輸送料も要らないので割安で買えるのだ。

 しかし魔道具で参入できてもそれだけでは雇用口として全然足りない。商会を大きくする必要があるので先ほどの魔法で足掛かりを作りたい。

 その為にもあの薬品を製品化する為の魔道具が欲しい。


 最初に支援するのはいいが延々とマイナスになっては意味が無いので、彼らにも頑張って貰わねばならない事を説明し金貨を四枚渡す。


「先ずはそれで服を買え。値段はどうでもいいが、高級そうに見える服がいい。

 残りの金で市民権の購入と同時に商会立ち上げの登録料を払ってこい。そこまでできたら支度金として一人大銀貨一枚支払う。月の給与は大銀貨一枚の予定だ。何か質問はあるか?」


 そう尋ねれば何故か薬師のレイヒムがおずおずと手を上げた。


「あの……働く前から一月分貰えるんですか?」

「ああ。一月もいらんだろうが準備ができるまでは待たせることになるだろうからな。

 まともに働くのであればきちんと生活は支えてやる」


 おお、と喜びを見せている。どうやら彼も商会で働きたい様だ。

 店を構えていた上、少しの指導で魔法を覚えられるであろうレイヒムの参入はありがたい。


「あの、俺らでも商会を立ち上げられるんでしょうか?」

「ああ。市民権を持つ者が役所にて手続きを行い登録料金を払えばな。ただ、前科持ちの場合は許可されない場合が多いが、大丈夫だよな?」


 そう問えば彼らはコクコクと頷く。


「レイヒム、お前が来てくれるなら連絡役を頼みたい。準備が出来たら店に人を寄越す」

「は、はい! その程度なら、お任せください!」


 うちで保護すれば簡単には手は出せませんから、と彼は言う。

 貧民街で唯一の薬師で多少の顔は利くらしく、下手に手を出す事はできない。

 そもそも制裁を受けて入院したのなら手を出してくることは無い。

 という見解の様だ。


「顔が利くならば、人を集めたりは出来るか?

 六人では全然足りないんだ。同程度の条件で雇うつもりだが……」


 貧民街縮小の方策。ここの人間を雇用して貧民を減らさねば意味が無い。

 彼が人を呼べるのなら助かるのだが、と声を掛ける。


「えっと、製作、販売まで指導して頂けるんですよね?

 それでその給与なら三十人は軽く集められるかと……」


 他の者たちも、できるなら家族もお願いしたいと言う。人員調達は簡単そうだな、とホッと息を吐く。


「リーエル、悪いが僕の支度金の中から大金貨百枚を使いたい。いいかな?」


 顔が利くならレイヒムに代表になって貰い、彼に融資をして給与も出して貰う形にしたい。

 彼らの態度を見るに恐らくは持ち逃げなどしないだろう。

 まあ大金を一括で渡すような馬鹿な真似もしないが。


「えっ、ハインフィード家から出すのでは?」

「いや、お抱えを持つ領主が新たに立ち上げた商会としてしまうと探りが入るから、僕の個人的な金を使い新規の商会に融資するという形を取りたい。

 リーエルから融資してもいいんだけど僕からの方が手続きも注目も少ないんだ」


 そう。成功すれば成功するほど様々な所から注目を集める。そうなると出資者、つまりはバックに誰が付いているのかなども噂として広がる。

 領主がお抱え商会を増やしたと知られれば、商人たちは利益を求め挙って探りを入れるだろう。そうなれば社交の場でも絶対に話題に上がる。


 扱うのが薬草とはいえ回復系統という繊細な物だねだ。

 まだグランデ公爵家の三男である僕が個人的にという方が色々と都合が良い。

 先を見ても領主の配偶者が個人的なお抱えの商会を作る事はままある事である。

 まあ、女性向けの流行りを追う為の場合が殆どだが……


 横領の件で領主ご用達の商会は解体したが、もう既に新たなご用達の商会は決まっているのでここでリーエルが動くよりも自然な形に収まる、と説明すると直ぐに理解を示してくれた。


「でも、いつでも手伝いますからね」とやる気も見せてくれている。


「じゃあ、帰ったら早速お願いするよ」と告げて彼らと別れ、屋敷へと戻りリーエルに一筆書いて貰う。

 魔道具を手掛ける技師に向けた領主からの魔道具製作の依頼、という形の文だ。


 前回制作した治療用魔道具の時にノウハウも学んでいる。今回は既存の物なので特に簡単だ。

 工業用なので大掛かりな物だが、領主から急ぎと文を貰えば直ぐ持ってきてくれるだろう。


 そうして製作依頼書を書き上げ、使用人に依頼書と文を魔道具ギルドに届ける様にお願いした。


 お互いやる事を終えて夕食で顔を合わせ進捗を報告し合うと「では、明日もそのお話を進めましょう!」とリーエルがやる気になっていた。


 領主のお仕事の方は僕が書類の作成をしている間に全部終わったそうだ。

 流石、大半の書類仕事を一人で熟してきた天才少女。


 エメリアーナもダンジョンに行く手筈が整った様で、明日発つらしい。

 彼女自身も次回は騎士団に混ざって活躍すると燃えていた。


 同行するのはルンともう一人は騎士団の兵士。

 エメリアーナは騎士団の人を使うのは渋っていたが、彼女の実力に合わせられる人材が他に居ないのだ。そうなると野営が出来ないので狩場に行く事すらままならないのである。


 ちなみにルンもそのレベルで戦える。


 元々優秀であった為に僕の護衛兼専属メイドになった彼女だが、僕が書庫に篭り続ける間は仕事が一切無いので、公的な用事が無いと確定している間はできるだけ自由を与えることにしていた。

 だが、真面目な彼女は訓練に勤しむ時間としたらしく数日時間が空いた時は、時に護衛仲間、時にハンターの友人を連れ常にダンジョンへと足を延ばしていた。


 その為、ルンは当家でも若手では抜きんでた存在として一目置かれているほどだ。


 僕の護衛から離れる事を嫌がっていたが「ここで僕を守るならもっと力が必要でしょ?」と告げると納得してくれた。


 そうして彼女たちの出立が決まったのである。

 正直、早く僕もそっちに行きたい。

 この前の学院襲撃で、僕自身にももっと力が必要だとわかったのだから。


 迅速に指示を出して纏めなければ、と領地の改革に向けて気合を入れ直したのであった。



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