第10話 ピロシキが大当たり
辰徳と理香子はマクの手さばきを見て居た。実家がパン屋とあってテキパキとしている。理香子は貯蔵庫に行きオリーブオイルを持って来た。それから一時間して、あとは揚げるだけとなった。ただ揚げるだけでは駄目らしく油の温度と時間、それと焼き上がりの色を見て決めるそうだ。
一時間後、出来上がったピロシキの試食する事にした。マクが言うように外はカリッとして中はフワフワだ。二人は目を丸くした。自分達がこれまで勉強して来たピロシキと全く違う。改めてこれが本物のピロシキの味なのか。しかし他所で買って来たピロシキより遥かに美味かった。二人は顏を見合わせて、とんでもない福の神が舞い込んでくれたと喜んだ。
「マク凄いわね。これを新商品として出して見ようか」
「それは嬉しい、でももっと改良して研究を重ね、みんなが納得したら出しましょう」
ピロシキでも一種類ではなく今回は三種類。通常のロシア風。次にカレー味。もう一つは餃子の具を加えた餃子風ピロシキで売り出した。
店は開いているが相変わらず売り上げは店を開けるだけで赤字の状態だ。それでも休まず店を開けた。少ない客だ、時おり店先にマクシム・アンドレーが立っていてチョッピリ噂になっていた。マクも抜け目なくお客さんに今度、本場のピロシキを発売するの宜しくと言いまわっている。
辰徳は早速、宣伝を始めた。〇月〇日 本場ロシア職人が作った本場ピロシキを発売。これをノボリと各家庭に織り込み広告を配る事にした。
すると辰徳の両親はジョギング代わりだと三日も掛けてチラシを配ってくれた。そして当日、またあの開店した日と同じようにドキドキした。しかし開店時間になって数人の客だけ。やはり駄目かと思ったらパラパラだが人が切れることなく客がやって来た。しかも大半がピロシキ目当てのようだった。この日は、久し振りに売り上げは五万円になった、その延びた分はビロシキの売り上げだった。ただピロシキは受け入れられたようだ。そして翌日、その翌日と客足が倍増して行った。勿論ピロシキの人気は一番だが合わせて他の商品も売れだした。客は知っていた本場と言う言葉に弱いらしい。なんたってロシア人が作るから本場ものだ。噂が噂を呼び急に忙しくなった。売り上げはついに開店当初に近い二十万まで伸びだ。
なんという事だ。校長が紹介してくれたマクシム・アンドレーは福の神だ。こうなってくると、いつまで居てくれるか心配になる。二カ月前に来たばかりだし、先の事を心配するのは早すぎるが。校長の話しだと日本にパンの勉強をしに来たいう事だ。果たして自分の店に彼が参考になるようなパンがるだろうか。此処では修行にならないと出て行くかも知れない。
つづく
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