第9話 ピロシキ

「いらっしゃい。私はリカコです。宜しく」

「初めまして、私はマクシム・アンドレーです。どうかマクと呼んで下さい」

「あっそれは呼びやすいわね」

「それじゃ僕はご主人をボス、奥様をママと呼ばせて下さい」

「えっ私がママ? まぁいいわ、好きなように呼んで」

簡単な挨拶が終わったところで辰徳は聞いた。

「処でマク、どうだいこの店の感じは?」

「僕は批評する立場にないのですが、いいと思いますよ」

「そうかい、じゃとりあえず店を案内するよ、まず工房、それとここは休憩室だが当分マクの部屋としょう。狭いが我慢してくれ」

泊まる所は店の奥に休憩所があり当分そこを住まいにする事にした。

「おー充分です。ありがとうございます」

その日は世間話をして明日から日程を決めることにした。


 翌日、辰徳と理香子は六時に起きて仕込みを始める。すると十分ほど遅れてマクが厨房に入って来た。

「お早うございます。ボス、ママ。遅くなりました」

「まぁ早いのね。まで寝ていれば良いのに」

「なぁに子供の時から早起きで、両親もパン屋ですから僕も早起きするようになったんです」

「そうかい、ところでマクに手伝って貰うような仕事もないし……そうだ君がロシアで作っていたパンを作ってくれないか?」

 そう言われたマクは製造中のピロシキを見た。その具を見て訪ねて来た。

「ママ、具は何種類くらい使いますか」

「そうねぇ出来るだけ本場ものに近くなるように十種類くらいかしら」

「で仕上げはどうするんです」

「そのオーブンで焼きます」

「それから」

「それで終わりよ」

「揚げないのですか」

「それも考えたけど手間が掛かるし、他所で買って食べたけど味に遜色はなかったわ」

「それ駄目です。基本は揚げるべきです。それもオリーブオイルで、すると外はカリッと中味はフワフワに仕上がるのです」

「へぇー流石、本場ね。出来たら試作品作ってみせて」

「オッケー久し振りなので上手く行けば良いですが」


つづく

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