第2話 店を出す場所は父が提供してくれた。

 そして次の休日、駅前の商店街に出掛けた。ここは駅から五分の所にあるアーケード街でも人出も多い。色んな店がある、なんとパン屋が二軒もあった。二人は落胆した。素人が出店して他の店と競っても太刀打ち出来ない。この二店舗に勝負出来るパンを作るのは難しい。目玉商品でもあれば別だが。二人は顔を見合わせた。お互いに諦めがついた顏だ。二人は買い物して家に帰って来た。

はぁー共に溜息をした。繫華街は撤退するしかない。そうこうしながらひと月が過ぎた。辰徳は久し振り実家に帰って来た。父母は健在だが父は現役を引退し隠居の身だ。


「辰徳、久し振りじゃないか仕事は忙しいのか」

「それがなぁ親父、もう辞めようかと思って」

「なんだって一流企業だぞ……理香子さんに相談したのか」

「嗚呼それがね、理香子と俺は同じ夢を持っていて、脱サラしてそれを始めようかと思って」


「脱サラ?  何を始めようと言うんだ。まさかラーメン屋じゃないだろうな」

「違うよ、理香子は結婚当初から将来パン屋をしたいと思っていて、それに俺も賛成したんだが、なかなか良い物件がなくて」

「パン屋、まるで子供が考えそうな夢じゃないか」

「確かにド素人だし簡単に行かない事は分かっている。でももう理香子はパン屋の専門学校に通っているんだ」

「ずいぶん気の早い事だ。で、資金はあるのか」

「それは心配ない、ただ何処に店を出すか問題で先日、駅前の商店街に物色しに行ったんだが既に二軒のパン屋が開業していて、これでは駄目だと諦めて帰って来たんだ」


「そりゃあそうだろうな。商店街にパン屋がない方がおかしい。……ハハーン分ったぞ。俺んとこの駐車場に目をつけてんだろう」

「流石は親父、でも親父の土地だし、そんな厚かましい事が言えないよ」

「馬鹿野郎、息子が親に遠慮してどうする。お前が喜ぶならいつでも提供してやるよ」

「本当か? それは有難いけど。まだ迷っているんだ」

「迷う事があるか、郊外とは言え周りに沢山の店もあるし目の前の道路は交通量も多いし開業すれば目に止まるさ」

「ありがとう帰って理香子と相談するよ」

二人は現在アパートには入っているが一時、建売住宅を買うつもりだったがパン屋を始めるために資金を貯めていた。辰徳の父、つまり実家まで車で三十分程度比較的近い。

 その話を聞いた親戚中が反対した。だが親だけは反対しなかった。息子の性格を知っているからだろう。それ以上に辰徳の妻が望んでいたことだ。辰徳の父親も理香子が気に入っていて二人を応援していた。


つづく

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