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意味など探すと探すだけわからなくて辛くなるし、目の前のことに集中できないから本当は考えないほうが良いんだろうけど、つい考えてしまう。


 リングに上がる時、水で膨れた重いお腹を引きずりながら、どうせありきたりな選手なんだろうと勝手に予想する。それでもここしか自分の出せる場所がなくて、出続けるしかなくて、決して戦う上で良いモチベーションとは言えないが、ちょいちょいリングにあがっている自分がいる。


 今日の相手は私と同じくらいの背丈か。目も大きくて目力も強い。ただ、スレンダーで華奢なモデル体型。好みの顔ではないが、まあまあ強そうな相手。少しは楽しませてくれるかしら。


 勝ちが続くと、油断することはまずないが上から目線に選手を見下す癖が付いてきた。


 ゴングが鳴ると、相手が素早く攻撃を仕掛けてくる。


 え?


 その速さ、繰り出されたパンチ。どちらとも予想外だった。何とかガードして避けたが、その素早くて適確で重いパンチは今までに受けたことがないものだった。


 一気に目が冷めて緊張が走る。


 ヒカル以来の強い相手かもしれない。不意打ちを食らわないように身長に相手の動きを伺おう。


 そんなことなどお構いなしに相手は連続してパンチを繰り出していく。


 すごい。どうすればいいんだろう。押されている。


 いつの間にかフェンスが後ろになっていて逃げ場がなくなる。そして、少し足がもつれた隙に胃と鳩尾の間にボデイストレートを食らってしまう。


 ウッ


 息ができない。


 たまらずお腹を両手で抑え片膝をついてその場に座り込んでしまう。別に不意打ちではなかった。腹筋も力を入れていたはずだ。でも、それを食い破るようにパンチがお腹にめり込んでいた。


 髪の毛を引っ張られて無理やり立たされると、また同じ箇所にパンチを食らう。


 今度は力を込められずモロに喰らい、胃が確実に変形させられるくらい深くめり込む。


 ウッ、、オウ、、、


 胃液が口の中に広がる。口を膨らませるが辛うじて吐くのは耐える。


 わかっていた。私が今まで勝ってきたのは圧倒的な運動神経を活かしたテクニックとパンチ力でどんどん押してこれたからだ。だからこうしていざ相手がテクニックも腕力もあれば、そこまで鍛えてもこなかったお腹は打たれ弱いし、スタミナもない私は不利になる。


 後ろのフェンスに寄りかかった状態で何発もボデイブローを食らう。アッパー、ストレートを胃、鳩尾、脇腹、おへその辺りとまんべんなく食らう。


 耐えきれず、パンチがめり込むと同時に嘔吐してしまう。


 痛い。苦しい。気持ち悪い。


 意識が朦朧とする中でそれだけが反芻して、相手にやり返す気力も、相手の攻撃をガードできる気力もなくなり、ただ手もダラッとして立っているのがやっとで棒立ちのような状態だった。


 20発くらいもろに打ち込まれると、疲れたのか相手の攻撃が止まり、その場にうつ伏せで倒れ込む。


 胃が痙攣してそれと同時に身体も痙攣しているのを感じる。


 レフリーがまだ意識があると言って、相手に攻撃するように合図しているのが聞こえる。


 横腹をつま先で蹴られてその反動で仰向けになる。天井のリングを照らされている照明が眩しくて目を細める。


 次の瞬間、相手の両膝が私のお腹にめり込んでいた。


 ウエ、、、ゴハ、、、


 盛大に吐き出した。


 衝撃とともに発した音と激痛で失いかけた意識が戻ってしまう。かと言って、もう、相手にどうこうするとか、なんとかしようとするまでは至らず、ただお腹を抑えて左右に転げてもがき苦しむだけだった。


 それからのことはあまり飛び飛びで覚えていないが、マウントを取ってお腹にパンチを振り下ろされてまたニードロップされて終わった。とにかく、何もできなかった試合ということは確かだった。


 意識が戻ったときには相手はもういなくて、嘲笑っている観客が数人いるだけだった。


 痛い!!


 起き上がろうとするとお腹の激痛でまた倒れ込む。その白いお腹は青黒い痣がいっぱいで、倒れ込んだ床を見ると私の吐瀉物と失禁してしまったモノが大量に撒き散らされていた。


 初めての敗北。


 無様というのはこういう事を言うのだろうけど、そんな感傷に浸れるほど余裕はないほどお腹が痛くて辛くて、気持ち悪くて、また舌を出してその場にえずいた。さらにどっと観客の笑い声が増す。



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