第15話 出発前の

「――なんともめでたきことに、我が校から異世界調査隊への参加者が誕生しました。2人居ます。2年生の田沼たぬま栄吉えいきちくんと、同じく2年生の早坂はやさか依乃里いのりさんです」


 この日、僕と早坂さんは学校の全校集会で大仰な扱いを受けていた。

 異世界調査隊の正式メンバーに選ばれたのは、まあ当然だけれど凄いことであるらしく、こうして校長先生のお話の時間に登壇することになっているのだ。


 ほんの少し前までいじめられっ子だった僕が、今や学校を代表する存在になってしまった。占いドリーム様々かもしれない。


 ――頑張れよ!

 ――異世界の配信してくれー!

 ――いのりんを守れよTくん!


 などなど、やっぱり学校では僕の正体が普通に割れていて笑える。

 でもいいんだ。中身が僕だと知ってなお認めてくれる人が多いのは、嬉しいことだから。


   ◇


「――さて田沼、いよいよ明日だね。異世界調査隊のスタートアップ」


 数日後の夜。

 翌日の出発に備えて、僕と早坂さんは僕の部屋で荷物の準備をしている。


 早坂さんの資金で色々良い武器と防具を取りそろえ、背負っていくリュックに関しても異空間収納機能を搭載しためっちゃ良いヤツを入手している。ほぼ無限に収納出来るから、異世界の珍しい品をゲットしまくりたいところだ。


 それと、異世界調査隊のメンバーは配信可であるらしい。すでに出発している他国の調査隊も、配信を行うことであえて全世界に情報を共有しているとのこと。その理由としては、異世界のエネルギー資源を抜け駆けして奪う国を生み出さないための相互監視行為ってヤツらしい。

 先日、世界首脳会談が行われ、異世界のエネルギー資源は基本的に全世界で分配することにしたそうで――それゆえに各国の調査隊はむしろ抜け駆け防止の相互監視のために配信を義務づけられた、というわけだ。


 でもエネルギー資源の保有権に関しては一応最初に見つけた国が優位ではあるらしく――たとえばどこかの国がドデカいエネルギー資源を見つけた場合、最初に見つけた国に4割の保有権を与え、残りの6割を他国で分けるとのこと。

 そんな規律が本当に守られるのか? どっかの国が独占しようとするんじゃないの? とか穿った目で見てしまうけれど、まあお偉いさんたちが決めたのならひとまずそれに倣うしかない。


 ちなみに異世界配信は安定して電波を繋ぐ方法が早々に編み出されている。端的に言えば、ダンジョン資源の【電波石】というアイテムを用いれば安定するというのが分かったのだ。電波石をふたつ用意して、片方を現世に置いて、片方を異世界に持って行くと、配信環境が安定する。各国の配信はそれによって普通に観られるようになった。


 僕らも電波石を準備しているから、早坂さんのチャンネルで配信する予定である。


「じゃあ田沼、異世界調査隊として良い成果を得られるように頑張ろうね」

「うん。そういえば今日って泊まっていく?」

「そのつもり。荷物はもうこっちに持ってきてるからね」


 と応じた早坂さんは、それから照れ臭そうに、


「そ、それとさ……」

「どうしたの?」

「とりあえず……今夜はいっぱいえっちしとかない? ほら、あっちに何日居るか分からんし、する暇もあるか分からんし……」


 とのことで……もちろん僕はそれを断らず、早坂さんの身体を堪能することで英気を養ったのである。

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