第14話 ヤバい

 結論から言えば、僕らは割とあっさり異世界調査隊の選定試験を突破することが出来た。


 伊万里さんから説明がなされたあとに行われた選定試験は、A級に設定された模擬ダンジョンの攻略だった。

 班を組んで、とかではなく、1人で。

 模擬ダンジョンには魔物が解き放たれているのは当然として、多彩なトラップやギミックが作動しており、対応力を見ているようだった。


 僕はステータスによるゴリ押しの他、予言で自分に『僕はこの試験でどんなシチュエーションにも対応出来る』と暗示を掛けて、身体がいかなる状況に晒されても勝手に危機を脱出出来る状態を作り出した。ステータス補正で身体能力がお化けになっているからこそその無茶な予言が実行出来たんだと思う。以前までの僕ならその予言は不履行にされた気がする。ともあれ、そんな感じで難なく試験を突破して合格。


 早坂さんもケルベロスとのコンビで(使い魔の使用はOK)危なげなく模擬ダンジョンを攻略して合格。


 他の有名どころたちも大体合格し、セラフィムさんも当然のように合格していた。


 そんなこんなで――


「では合格者の皆さんには後日改めて異世界調査隊のスタートアップ日時等を書類にて通達させていただきます。本日はお疲れ様でした」


 という感じで、僕らは現地で解散となった。


「――じゃあ異世界調査隊の合格を祝して、かんぱーいっ!」


 その後、僕と早坂さんは近場のファミレスで自分たちのお祝いをこぢんまりと始めたのは良かったんだけど――


「はーい乾杯でーすっ」

「って、なんであんたも居んのよ!!」


 どさくさに紛れる形で、ゴスロリS級冒険者黒髪美少女JKのセラフィムさん(もちろん本名じゃないらしい)が相席してくる事態が発生していた。


「推しを尾行してきたんですっ」

「尾行してこないでよ! メンヘラかっての!」

「メンヘラはあなたでしょう! 推しをパシリにしているだなんて許せません!」


 ……セラフィムさんは僕を推してくれている。だから表向き僕をパシリにしている設定の早坂さんが許せないらしい。


「Tくんさんっ、こんなギャルとは縁を切って私と手を組みましょう! 飲食店ゆえに白マスクを外されているその素顔も良き良きの良きです! もっと推したくなりました! だからギャルの魔の手から助けてあげたいです!」

「あ、ありがたいですけど……一応好きでパシリをやっているので早坂さんと縁を切るとかはないです……」


 そう言っておけばセラフィムさんは諦めてくれるかなと思ったけれども――


「――す、好きでパシリ!? 洗脳されているんですね!! おいたわしや!!」


 と、飛躍した思考を披露してくれた。


「せ、セラフィムさん……僕は別に洗脳されてないので……」

「好きでパシリをやっているなんて洗脳としか思えません! 私が救ってあげないとこれは手遅れになってしまいそうですね!」


 ダメだ……話が通じてない……!

 や、ヤバい……セラフィムさんはひょっとしてガチでメンヘラ……?

 思えばゴスロリだもんな……ゴスロリってメンヘラ専用装備でしょ?(偏見)


「聞くところによりますと、異世界調査隊が現地に向かう際は幾つかの班に分かれて活動するようです! 私は祈っておきますね! 私とTくんさんが一緒の班となり、この悪魔が別の班になってくれることを!」


 そんな主張をしながら、セラフィムさんは僕に色々とアピールしてきて、早坂さんがそれを見て怒ったりして、この場は非常に混沌としつつ、やがてお開きの時間を迎えることになった。


「では異世界調査隊のスタートアップ時にまたお会い致しましょう! それでは♡」


 早坂さんをガン無視して僕に投げキッスをしながら、セラフィムさんは公共交通転送拠点ワープステーションの方に歩いて行った。


「や、やっばいのに目を付けられたね……田沼……」

「う、うん……」


 まぁでも……セラフィムさんは強いんだから、上手く操縦出来れば有益……なはず。


   ◇


隠しスキル:【予言】……現実に限らない範囲において、言ったことが現実になる

現状レベル:13

言霊実現度:中+4


【レベルの上昇が発生しました(経験値ブーストによる補正込み)】

レベル:108⇒111

攻撃力:279⇒286 A

防御力:282⇒288 A

敏捷性:268⇒273 A

  運:289⇒297 A

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