第3話 使い魔も人を選ぶ
「お、謎の占い男子Tくんじゃん」
翌朝。
教室に登校したら、刻暁石ゲット配信の影響で登録者数が一気に10万人を突破した早坂さんが近付いてきた。
「そう言う早坂さんは一気に億万長者ちゃんじゃん。親戚増えないように気を付けて」
「えへへ、あたしもう刻暁石買い取ってもらったから口座ポカポカ♡ 学校通う必要も就職する必要もなくなったぜ☆」
「確かにもう人生早期リタイア出来るよね? でも学校来てるんだ?」
「そりゃ友達が居るもんでね」
アオハルな理由だ。
友達の居ない僕とは大違いだな。
僕が億単位の金もらったら絶対引きこもりになる自信がある。
「それより田沼っ。あんたの予言また当たったじゃんっ。良いアイテム見つけて盛り上がって初配信成功するってさ! すごない!?」
「いや偶然だと思うけどね……」
バーナム効果狙いでテキトーなことを言ってるだけなんだからさ。
「偶然じゃないと思うけどなぁ。多分さっ、田沼には何かあるんだよ!」
「何かって?」
「知らんけど、なんかあるんだって! 2回も奇跡的な予言を食らったあたしはもう田沼信者だから何かあるって思いたい!」
田沼信者て……。
まぁでも、テキトーなこと言ってるだけでクラスのカースト上位美少女ギャルから信仰心を得られたのはすごい気がする。
いいぞー僕。
「――おい田沼」
そんな中、
「お前調子乗ってんじゃねーぞ」
僕を去年からいじめ続けているイケメン男子の飯島くんが、いきなり僕の胸ぐらを掴み上げてきた。
うぐ……。
「ちょっ、飯島! やめなよ!」
「うっせえ早坂! お前もお前だ! こいつの戯れ言にまんまと踊らされてんじゃねーぞクソが!!」
飯島くんは胸ぐらを掴み上げたまま、僕に目線を戻してくる。
「田沼ァ……お前そんなにすげー占い出来るっつーんだったら、俺が今日このあとどうなるか予言してみろよ?」
そんなことを言ってきた。
「俺は今日の放課後に
……めんどくさいな。
まぁテキトーに言っておこう。
「……良くないことが起こるよ」
「良くないことだぁ?」
「君になつく使い魔候補の魔物は居ない。むしろ嫌悪感を剥き出しにされて触れ合おうとした瞬間に反撃されて怪我でもするかもね」
そう言ってやった。
……ちょっと具体的すぎてバーナム効果を狙えなくなってしまったな。
「へえ、そうかよ。じゃあ俺が無事に良い使い魔を買ってこれたら明日その使い魔でお前をぎったんぎったんにしてやるから覚悟しとけよなぁ?」
ぶんっ、と僕の胸ぐらを突き放し、飯島くんは自分の席に戻っていった。
「田沼、大丈夫?」
「あ、あぁうん……」
早坂さんがネクタイを直してくれている。
これちょっと役得だなと思う。
それより……飯島くんの放課後はどうなるんだろうか。
さすがに……外れるかもな。
◇
翌朝。
学校に登校してみると、飯島くんが居なかった。
遅刻かと思ったら――
「飯島くんは昨日の放課後に獣市の触れ合いコーナーで指を食いちぎられる重傷を負ったそうです。再生治療を受けるために今日はお休みとのことでした。皆さんも獣市に行く場合はくれぐれも注意してくださいね」
と担任の先生が忠告してきたことで――
「――ちょっ、田沼また当たったじゃんっ!! なんか予言の精度増してきてない!?」
そう言って朝のホームルームが終わったあとに早坂さんが興奮した様子で僕のもとに迫ってきた。
「どうなってんのその予言の精度!?」
「し、知らないよ……」
僕自身、怖いくらいだ。
なんで僕の予言通りのことがピンポイントで起こるんだよ……。
「なんかガチで凄味出て来たからさ、今度あたしのチャンネルに出てよっ」
「え」
「ダンジョン配信を盛り上げるゲストとしてさ! ダメっ?」
「え……なんというか……目立つのはイヤなんだけど」
女子にモテたくて占いを始めたとはいえ、そこまで羽ばたくつもりで始めたわけではないし……。
「じゃあ仮面でも被っとけばいいよっ。報酬も出すからお願いっ!」
「……でも僕無能だから、ダンジョンへの同行権限はそもそもないよ?」
「そこはほらっ、Zoomでワイプ出演でいいじゃんっ」
まぁ……そういう感じならラクそうだし、別にいいか。
◇
隠しスキル:【予言】……現実的な範囲内において、言ったことが現実になる。
現状レベル:3
言霊実現度:低+2
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