第38話 得意料理を貴方に
『家族やラーくん達以外に食べてもらうのは初めてだから緊張しちゃうねぇ。でも楽しみかも!腕によりをかけちゃうよ♪』
いよなの中では明後日の勉強会で料理を振る舞うことは確定事項になっているらしい。
悪魔に魂を売り渡した俺のせいで勉強会という隠れ蓑を被ったサバトが開催されることが決定した……
デモデモダッテ俺は悪くないからね!
料理をしたいと言い出したいよなを止めるなんて誰にも出来ない。おばさんでも無理だ。
そしてここ最近被害を一手に引き受けていたらしい茶楽雄は今回は関わってこないだろう、そうなると生け贄は俺しか居なくなる。
なら被害の拡散を狙って他のやつを巻き込むよね?よね!?
幸い仁も沙織さんもいよなの
俺だって幼馴染であり最近莉音絡みで世話にもなっているいよなを悪くは言いたくない。言いたくないがアイツの
『ところで何作る気だ?』
念の為何を作ろうとしているか聞いてみる。
『な・い・しょ♡ていうかまだ決めてないのぉ』
『簡単なものでいいぞ?ゆで卵とか?』
『ぶー!ラーくんあたしの腕前をみくびってるでしょ!』
いやいやお前の腕前をある意味信頼してるから言ってんだ!
『ラーくんだってしばらくあたしの料理食べてないでしょ!これでも腕上げたんだからねぇ〜だ!チャラくんだってラーくんに食べさせたいって言ってたし!』
それはもしかしてダークマターの破壊力が向上しただけじゃねぇか?茶楽雄は今の俺と同じ心境で俺を道連れにしたいだけだったんじゃね?
いや……ワンチャン本当にいよなの料理の腕が上がってて、食べられるものを作れるようになったのかもしれない。
……ねぇな……ねぇわ、言ってて虚しくなってきた。
『まぁ楽しみにしててね』
『お手柔らかに頼む』
ホントにお手柔らかにお願いします。
俺はまだ耐性もあるし心構えも出来るからマシだ。
巻き添えを食らうことになる仁と沙織さんが、生きて月曜日を迎えられるように胃薬位は用意しておこう。それが俺に出来る最低限の贖罪だろう……
『じゃあ勉強に戻るから』
『あたしは明後日の構想を練るよぉ!』
練らなくて良いから!なんならおにぎりとかで良いから!
メッセージアプリを閉じながら考える。
さて、ここまで言っといてなんだけど、ぶっちゃけいよなの料理は不味いけど食えるよ?頑張ればね。余程の事が……例えばアイツの得意料理が出て来るとかがない限り、人死が出ることはさすがに無いだろう。多分……メイビー?
何だったっけなアイツの得意料理……やたらカッコいい料理名だったような……え〜とドラゴンじゃなくって……
あ!そうだ!あれだ!
【安里 いよな Side 】
『お手柔らかに頼む』
むぅ、ラーくんはあたしの料理の腕を信用してないな!
マ◯ク……関西ではマ◯ドって言うんだよね?ナルドはどこに行ったんだろう?そーいえばナルトってあのグルグルがカワイイよね!うん、関係ないか。えっと……マ◯クでの沙織ちゃんとの作戦会議で、これからラーくんのトラウマを癒しながらゆっくりアプローチしていく方針になった。
その方法としてあたしの持ち味のカワイさを前面に押し出すのは、ラーくんには効果が薄いんじゃないかと沙織ちゃんから指摘されたの。
ならどうするのかというとぉ、あたしの隠れた魅力であるアダルトな、お・と・なの魅力でカワイさとのギャップを狙うのです!ドヤァ!
その案を出してくれたのにすぐに撤回しちゃった沙織ちゃん、その時の物言いにはちょっとカチンと来ちゃった。
「失礼しちゃうよね〜」
けど言いたいことは分からなくはないよ?あたしの魅力はカワイさに極振りしてるから、他の魅力がよく見えなくなっちゃう……強すぎる光に他の光が隠れちゃうみたいな?
でもねあたしだって料理好きとか家庭的なところもあるんだよ?
ここ最近はラーくんにお料理を振る舞ってなかったから、あたしの成長をラーくんは知らない。それを見せ付けることでアピールになるんじゃないかなと思うんだけどなぁ。
最近よく試食してもらってたチャラくんも、ラーくんに食べさせたいって満面の笑みで言ってくれてたし。……あの仏頂面がデフォで笑うの苦手なカッコつけのチャラくんがだよ?目は笑ってなかったけどね。
なんとかラーくんにあたしの料理の腕前を見せつけたいなぁ……
そうだ!良いこと思いついたぁ!
ラーくんも知ってるあたしの得意料理を食べてもらって、昔に比べてどれだけ上達したか身を持って体験してもらおう!
あれを作るのは数年ぶりだけどシッカリとレシピは頭に入ってるよぉ。
えへへっ楽しみにしててねラーくん!
美味しく作ってあげるね♪
【安里 いよな・根戸 羅怜央 Side 】
「子羊のエストラゴン風味!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます