第36話 方針決定!(明後日の方向に向けて)


【安里 いよな Side 】



 沙織ちゃんとハグしてたら周りから、


「てぇてぇ」


 って声が聞こえてきた……女の子とハグしてるときとかにたまに聞くけどこれってどういう意味だろ?そういえば仁くんも言ってたなぁ、今度聞いてみようっと。



 りっちゃんとチャラくんのやらかしと、ラーくんのトラウマが沙織ちゃんに知られちゃった……でもまあここまではある意味想定してたことだから問題はないんだけどぉ。

 想定外だったのはあたしの気持ちをりっちゃんが暴露してくれやがったから、それを沙織ちゃんに知られちゃった事だよね……だけど知られちゃったものは仕方ないからいろいろと相談しちゃお!


「あたしがラーくんの事を好きな事はもう知られちゃったから開き直るけどぉ、沙織ちゃんその件で相談にのってください……お願い!」


 両手をあわせてお願いする。沙織ちゃんにはいろいろ知られてるから躊躇されるかもだけど、ここは拝み倒す勢いで行くよ!


「もちろんだよ〜私に任せて!羅怜央くんといよなちゃんがラブラブイチャイチャ出来るようにしてみせるよ〜!」


 え?二つ返事?いやありがたいけどぉ、なんか鼻息フンスフンス言ってるよ?その鼻息の勢いがすごすぎてちょっと引く。


「と言ってもラーくんもりっちゃんと別れたばかりだからまだ次の恋愛とか無理だろうけどぉ」


「甘い!チョコパイにハチミツかけてキャラメルマキアートで流し込むより考えが甘いよいよなちゃん!」 


 うわぁ……想像しただけで太りそう……でも美味しそう……ていうか、そんなに考え甘いかな?

 あたしのそんな考えが顔に出たのか沙織ちゃんは厳しい顔をしてる。なんか劇画調でちょっと怖い。


「でも……ラーくんのトラウマを癒してあげながらゆっくりでもいいんじゃないかなぁ?」


 ラーくんだって傷付いているんだから癒してあげないと、と恐る恐る言ってみる。


「そんな甘い考えじゃ羅怜央くんを横から掻っ攫われるよ?羅怜央くん結構モテるんだからね?」


 そんな事言われなくても知ってるもん!ラーくんは小学生の頃から女の子に人気があった。まぁその頃はそういう事に無頓着だったし、恋愛に興味を持ち始めてからはりっちゃん一筋だったから本人は気付いていないけどね。

 

「羅怜央くんの心の傷を癒したいっていういよなちゃんの気持ちは痛いほどわかるよ?だからこの際ラブラブイチャイチャしながら癒してあげよ?甲斐甲斐しく羅怜央くんを癒すナイチンゲールのようないよなちゃん……グハッそのシチュエーションのいよなちゃんも萌える!ね?そうしよ?」


 なんか目が爛々と輝いてるよ?しかも鼻息がさらに荒くなってるよぉ。さっきから沙織ちゃんの様子が変だよぉ!劇画調になったり早口になったりって!……あたしの勘違いじゃないよね?


「燃える?沙織ちゃん?沙織ちゃんしっかりして?さっきからなんか変だよ?というか怖いよ?」


 あたしの言葉に沙織ちゃんもフンスフンスと荒かった鼻息を少し落ち着かせてくれた。

 落ち着いてみると、自分のあまりの勢いに恥ずかしくなったのか顔を赤らめちゃってる。そんな沙織ちゃんもちょっと可愛いかも。


「コホン……うん大丈夫怖くないよ?まぁそういうことだよ!」


 あっ誤魔化した。


「つまり、あまり悠長にしてると他の子に取られちゃうよってこと?」


「そうそう!もちろん私も周囲の子を牽制するつもりだけど、いよなちゃんにも積極的に行ってほしいなって!」


 う〜ん、相談に乗ってくれてるし応援もしてくれてるのは分かるんだけど、なんだろう沙織ちゃんから香ばしい香りが漂っているよぅ。


「もしかしてだけど……沙織ちゃん楽しんでない?」


「ななななんのことかなぁ〜私は純粋にいよなちゃんの恋のキューピットになりたいだけだよ?」


 なら、なんで吃るのかな?……まあいいや、純粋かどうかは置いといて善意ではあるみたいだしぃ?


「そだねぇ……気持ちは嬉しいよぉ?でもごめんねぇやっぱりもうちょっとだけ見守っていたいかなぁ」


「だから甘いよいよなちゃん!カヌレにあんこ乗っけてストロベリーフラペチーノと一緒に食べるくらい甘いよ!」 


「そのくだりさっきもやったよぉ!聞くだけで太りそうだからやめてぇ!あと話が堂々巡りだよぉ!」





 グダグダになった話を落ち着かせようとバニラシェイクを追加で買ってきた。

さっきの沙織ちゃんの甘味例えで甘いものが欲しかったからちょうどいいし。


「私はイケイケドンドンでグイグイ押すべきだと思うけど、いよなちゃんの羅怜央くんをゆっくりと癒したいって考えもまぁ分からなくはないよ?」

「そこで私沙織ちゃんは考えました!意見が割れたなら真ん中を取ればいいじゃんって!」


「真ん中ぁ?どういう意味?」


 あたしは当然の疑問を投げかける。


「そう!真ん中!羅怜央くんの心を癒やしてあげながら少しずつアプローチして行くの!て言っても、いつものいよなちゃんの可愛さアピールだと羅怜央くんには免疫が有ると思うから攻め方を変えます」


 攻め方?


「例えばちょっとツンツンした態度を取ってみてその後甘えてみたり」


 おぉ……ツンデレ


「クールに接してみてたまに甘えてみたり」


 なるほど……クーデレかぁ……あたしっぽいしありかも、


「アダルトな大人の魅力で攻めてみたり?」


 それだ!アダルトな大人の魅力!あたしにピッタリ!


「あ〜……ごめんネ今のナシ!うん、そっちはいよなちゃんには無理だったよ……」


「なっ!なんでだよぉ!大人の魅力ありまくりじゃんかぁ!」


「あっはっは、ウケる」


「失礼な!よーし分かったよ!さり気ない大人の魅力でラーくんを落としてみせるもん!」


 よし!方針は決まったよ!


 ラーくん覚悟!





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