第35話 開く(おせっかいの)扉
【安達 沙織 Side 】
広田さんのお宅から戦略的撤退をした私といよなちゃんは、少し休もうということになってマ◯クに入った。
「今日はありがとうねぇ」
「いえいえどういたしましてだよ〜、というかあまりお役に立てなかったかもだね〜」
実際、私はあまり話に入っていかなかったから……
「そんな事無いよ?すっごく心強かったんだから」
ホントかな?終始押せ押せだったから私要らなかったような気がするんだけどな〜
「そうかな〜下司野くんタジタジだったよ?」
「そう?チャラくんはいつもあんなもんだよぉ?」
なんでもないように答えるいよなちゃん。
え?嘘でしょ?チャラチャラした外見とは裏腹に硬派な事で有名なあの下司野くんが?
いよなちゃんの下司野くんに対する気の置けない接し方やぞんざいな扱いに、ふたりの付き合いの深さが垣間見える気がした。
シェアしたフライドポテトをふたりでバクつきながらとりとめもなく雑談をしていたら、なんとなく羅怜央くんの話になった。
「びっくりしたよ〜羅怜央くんと広田さんが別れてたなんて……あんなに仲良かったのに……」
「まあねぇ、あたしから見てもアツアツだったもん、それでも普通に別れただけならあたしは何も言わないんだけど……もう沙織ちゃんは知ってるから隠さないけどぉ、あのおバカさん1号と2号がやらかしてくれちゃったからねぇ」
まさか浮気されたうえにその相手が幼馴染の親友なんだもん、そりゃあトラウマにもなるよ。昨日のあの態度も納得だよ。てか、あのふたりをおバカさん呼ばわり出来るのはいよなちゃんくらいだろうな〜。あっあと羅怜央くんもか。
「あのふたりどうするんだろうね?付き合うのかな?」
「知らな〜い。好きにすれば良いと思うよぉ」
ありゃま、いよなちゃんがちょっと拗ねてる?ていうかちょっと怒ってる?
広田さんの言葉を信じるなら、いよなちゃんは羅怜央くんのことが好きみたいだし思うところもあるんだろうな〜
「そんな拗ねてるいよなちゃんも可愛いよ〜!」
「拗ねてないもん!」
「もう〜!ホントに可愛いな〜!」
でもいよなちゃんが羅怜央くんのことを好きだなんて……それに下司野くんと広田さんのことも考えると、外側から見ているとすごく仲の良い4人組だったけど、実際はかなり危ういバランスで成り立っていた関係だったんだなぁ……
幼馴染のドロドロした愛憎劇、絶好のゴシップネタだしドラマなんかだったら私も大好物だけど……友達2人が絡んでるんだから楽しむなんて不謹慎なことは出来ない。万が一にも周囲に漏れないようにしないと……
なんて決意を固めているといよなちゃんが不安そうな上目遣いで、
「いろいろと内緒にしててね?」
とあざと可愛くお願いしてきた。
「何のことだろ〜?私はいよなちゃんと2人で広田さんのお見舞いに行っただけだよ〜」
わざとらしかったかな?でもこれはやらなきゃいけない通過儀礼でしょ?
私のわざとらしい物言いでもいよなちゃんには真意が伝わったみたいで、
「わ〜んありがとぉ!沙織ちゃん大好きだよぉ〜!」
勢いよく抱きついてきた。
……何この可愛い物体は!?もう!こんなに可愛く抱き締められたらいけない扉を開きそう……決めた!この子の恋、私が全力で応援するから!
「私も大好きだよ〜!」
いよなちゃんを抱き締め返しながら、この可愛いいよなちゃんに想われている羅怜央くんのことを考える。
羅怜央くんは何気にモテる。ていうか、いよなちゃんも含めたこの4人組は違う方向性でそれぞれがモテる。
・あざと可愛くて男子女子関係なく我が校で絶大な人気のあるいよなちゃん。
・しっかりしてるように見えるけど儚げで守ってあげたくなる隠れ人気のある広田さん。
・見た目はチャラいけど二枚目で、でも実は性格は硬派でちょっと怖い。ワイルドな男の子が好きな子に人気のある下司野くん。
・広田さんと付き合ってるし、そのうえいよなちゃんと幼馴染で仲も良い事で男子からのやっかみが凄いけど、それ以上に不思議な魅力で周囲を引き付ける羅怜央くん。
実際私の周囲でも羅怜央くん狙いの娘が居る、でも広田さんというぶ厚い防壁があったからアプローチをかけるようなことはしていなかった。
広田さんと別れたことはまだ周囲に知られていないけど噂は出回っている。曰く『根戸 羅怜央と広田 莉音が別れた〜』。仁くんが広めてたから間違いない……っていらない事してくれちゃって!
今は噂止まりだから周囲の動きはないけど、ふたりが別れたのが事実となるとそういう娘たちが動き出すかも……
無いとは思いたいけど横から掻っ攫われる可能性もある。
気の所為か、幼馴染といういよなちゃんの立場も何気に嫌な予感を助長させる……ほら、ラノベとかでも幼馴染は負けヒロインって言うし?
応援すると決めたからにはちゃんと考えてフォローしないと。周囲をそれとなく牽制していよなちゃんが優位になるように立ち回ろう。
見ててねいよなちゃん!私が、わ・た・し・が!恋のキューピットになってあげるからね!
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