第13話 糾弾 1 愛よりも……


「そこまでだ……2人とも動くなよ?」


 スマホで動画を撮りながら室内に入る。

 ベッドの上でブラウスの前を全開にし、ブラジャーをずらして胸を露わにしてスカートがたくし上げられている莉音と、下半身裸で莉音に覆いかぶさり腰を莉音の腰に打ち付けていた茶楽雄が呆然とこちらを見ている。てか俺のベッド使ってんのかよ!


「すごい格好だねりっちゃん、ラーくんせめてりっちゃんに服を整えさせてあげて?」


「え?いよなちゃん?ラーくん?うそ……羅怜央くん!?ちがうの……これは違うの!!いや……いや……いやーーー!!」


 俺の存在を認識して半狂乱になる莉音、それに引きずられたのか、


「羅怜央?……な「お前は喋るな」ぐはっ」


 茶楽雄がなんか喋ろうとしていたが、こいつの話は今は聞くつもりも無いので顔面にブーメランフックをかまして黙らせた。


「いや!違うの……聞いて羅怜央くん……これは違うの……」


 ブラウスを搔き抱くようにして前を隠しながら「いや」「違うの」を繰り返す莉音。


「なにが違うんだ?」


 ひどく冷たい声になってたと思う、莉音も聞くのは初めてだろう俺のそんな声に少し怖気づいているようだ。


「あのね?……その……ごめんなさい、ちがうの」


「なぁ莉音……覚えてるか?二人で初めて行った映画……あれな今度レンタルで出るんだ、お前とまた見ようと思ってたのに……レンタルになるのが遅かったよな?」


「羅怜央くん?」


「……俺より茶楽雄の方が良いんだろ?」


「違うの!そんな事ないよ?そんな事ない!」


 俺はスマホを操作して音声を再生した。


『いやいや!茶楽雄くん……茶楽雄くんのがいいです!だからやめないで!もっとしてー!』


「いやーー!お願い聞かないでーー!違うのこれは違うの!!私が好きなのは……愛してるのは羅怜央くんだけなの!!」


「こんなにも乱れた莉音を俺は知らない……これを聞かされてその言葉を信じろと?」


「体は茶楽雄くんに奪われたけど!でも心は!心だけはまだ羅怜央くんのものだよ!?」


 またえらく都合のいいこと言ってんな?


「はっ!俺じゃお前を満足させられなかったということだな……だから茶楽雄に走ったんだろ?」


「そんな事ない……」


「そもそもなんで茶楽雄とこんな事になった?」


「それは……告白されて……」


「告白されて受けたのかよ!?」


「違うの!断ったの!断ったけど……」


 思い出が欲しいとでも言われたか?こいつはしっかりしてるように見えて、どこか考えが甘いところがある。


「なし崩しで関係もって抜けられなくなったんだろ?」


「それは……」


 当たりか……こんなのが正解しても嬉しくねぇよ。


「もういいだろ?ここまで来たら全部話せ……」


 一瞬逡巡していたが結局言い訳するのを諦めたのか、なんとか俺に顔を向けて話しはじめた。


「きっかけは……茶楽雄くんからの告白でした……もちろん断ったよ?断ったけど、そうしたら想い出が欲しいと言われたの。今思うとここで断るべきだったのに、私はただ1度だけで茶楽雄くんが納得してくれるのならと身を任せてしまいました」


「はぁ~……馬鹿野郎……なんでそうなるんだよ……俺にバレたらどうなるとか考えなかったのかよ?」


「そうね……今冷静に考えたらその通りだと思います……でも、あのときはこうすることが私達4人の関係には1番良いんだと信じてしまった……」


「……最初のきっかけは分かった、納得はしていないけどな。それで?なんで2度目も会おうと思ったんだ?」


「それは……その……」


 すごく言いづらそうにしてるな……よほど俺に言えないことなのかね?


「りっちゃん?もう話すしかないんだよ?それとも私達が勝手に解釈しちゃっていいのかな?そうだね〜例えばチャラくんと結託して、ラーくんをこの件で学校中の笑い者にするための打ち合わせとか?その流れでエッチしちゃった?」


 こいつとんでもないこと言いやがる……


「違うよ!そんな事考えてない!」


「なら話して」


「……茶楽雄くんとのセックスが忘れられなかったの」


「なに!?」


「茶楽雄くんとのセックスはそれまで私の知ってたセックスとはまるで違ってた……肉欲と背徳感と羞恥心と罪悪感とがぐちゃぐちゃに混じり合って私を溶かすの……気持ち良さだけを私の子宮に突っ込んだようだった……そして初めてイッてしまった」


「え?それじゃあ、あのときのアレは……あの言葉も全部嘘なのか?お前……それはあまりにも……」


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」


「「今までで一番すごかった……こんなに気持ちよかったの初めて……はしたなくてごめんね、でも愛してる」だったか?こんな事言いながら影で笑ってたのか……」

 

「そんな事してない!嘘なんて言ってない!ホントに愛してるの!!私を信じて?」


「今まででの話を聞いてて、お前の何を信じられるんだ?」


「そんな……」


 え?なんでそんな傷付いた顔で泣くことが出来るんだ?


「俺が泣きたいくらいなんだが……男の尊厳を踏み躙られてしかも影で笑われてたなんて……」


「そんな事してない!影で笑ったりなんてするはずない!ホントに愛してるの信じて!」


「信じられるわけない。たとえ愛してるってのがホントでもその愛より性欲のほうが上なんだろ?だから茶楽雄を拒絶出来なかった。だよな?」


「それは……」



「そうだ羅怜央!結局莉音は俺に靡いたんだ!」


「茶楽雄」








◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


修羅場が始まりましたがあまり修羅場ってないですね。

功夫が足りないです。もっと修行しないと……


それとすみません、ストックが心許なくなったので毎日更新から2日毎の更新に変更させてください。ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!見捨てないで!


では次回も読んでいただけると嬉しいです。

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